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2012.02.01 Wednesday

アフガン トルクメン絨毯


デプレスのきいたアフガン・トルクメン絨毯をご紹介します。
この絨毯は何度写真を撮っても実物と違いすぎて掲載をあきらめていたのですが、やっと、そこそこの写真が撮れました。



購入時、アフガニスタン北部のドーラタバードに住むトルクメンの絨毯と聞きました。



この写真はつづけて撮ったものですが、色合いが変わって見えます。
ほんのわずかな光の当たり具合で、これだけイメージが変わるんですね。
毛並みの方向や光の当たり具合で変わって見えるのは、シルク絨毯だけでなくウール絨毯も同じです。
艶のあるパイルや長めのパイルの場合は特にそうです。



この絨毯もウールに艶があり、パイルが1.5cmほどあります。



裏を見ると、ノットの単位が単数になっています。
「デプレスのきいた絨毯は、裏側に結び目がひとつしか見えず、デプレスのきいていない絨毯は、裏側に結び目が二つ見える」と書きましたが、
絨毯の裏を見れば、デプレスの有無がわかります。
この絨毯は、かなり強いデプレスがかかっていて、結び目が盛り上がって見えるくらい。



この写真では光の反射のために、右下がマゼンタ色に写っていますが実際は違います。
深い茜色が基本で、角度によっては紫がかって見えるときもあります。



屋外で撮るとこんな感じ。
茜の濃淡とインディゴ、ほとんど黒に見えるパイルも混じっていますが、この黒の由来がわかりません。
茜は天然染料だと思いますが、完全な黒色は天然染料では出せないと聞きますので
もしかしたら黒は化学染料かもしれません。ただし使われているのはほんの一部です。



大きさは約1m×1.5mですが、かなり重い絨毯です。
パイルが長い上に打込みが密で、デプレスが効いているため、とても丈夫な絨毯です。

この質感は、ラノリンと呼ばれる羊の脂が豊富なウール、打込みの密度やパイルの長さといった点で、
ゾランヴァリの「カシュクリ」や「ルリバフ」にカテゴライズされるギャッベに近いのではないでしょうか。
違うのは色合いとデザインです。

じつは私がギャッベの次に夢中になったのがアフガンのトルクメン絨毯でした。
いまでもギャッベは好きですが、アフガンのトルクメン絨毯のあたたかい茜色と飽きのこないデザインは、ギャッベにないものでした。
日本の一般的な家やマンションにも似合うと思います。
なんというか、「くつろぐ」には最高の質感だと思うんですね。



絨毯やキリム関係のサイトを見ていて残念なことは、
自分のフィールドから外れる絨毯やキリムのことをけなす業者さんがいることです。
もちろん一部の業者さんですが、トルコびいきとイランびいきが争っている感じがします。

そもそも毛織物といっても本当にさまざまなものがあり、「トルコ」とか「イラン」でひとくくりにはできないのではないでしょうか?
また、「トルコ人は……」とか「イラン人は……」と決めつけるのは偏見につながります。
ご自分の経験からものを言っているのでしょうが、それが全てではないと思います。
もちろんお国柄というものはありますが、日本人だって几帳面な人もズボラな人もいるように
国で人柄をネガティブに決めつけるのはよしましょうよ。

また、なにか「部族絨毯」というと、粗悪なもののように思いこんでいる方もいるようですが、
その人は一体、部族絨毯についてどれだけ知っているのでしょう?
私も知らないことばかりですが、知らないのに悪く言うのはよしてほしい。

アフガンのトルクメン絨毯は、なかにはあまり質の良くないものもあるでしょうが、
美しさと実用性を兼ね備えた素晴らしいものがたくさんあります。

ただあまり日本の市場に出回っていないため、すばらしい実物に接する機会がほとんどなく、
バルーチにせよトルクメンにせよ、写真うつりが悪いため、ネットではその良さが伝わらないのが残念です。

* * *

antique collector's club発行の"Oriental Rugs vol.3 The Carpet of Afganistan"などを見ますと、

アフガンのトルクメンは、支族としてのテッケやヨムートもいますが数として多いのはエルサリで、
エルサリはさらに四つのサブ・クランに分かれ、それがまた50以上に分かれているそうです。
この絨毯は「スレイマン・ギュル」が使われており、エルサリのサブ・クランであるスレイマンのメンバーの手によるものでしょう。

またドーラタバード(地名)の絨毯には、カラコル羊の上質のウールが使われ、
固く引きしまった織りで、非対称結び、"double wefted"と説明されています。
この"double wefted"というのは「デプレスあり」と同じ意味で、逆の「デプレスなし」は"single wefted"となります。
(ちなみに日本では「シングル・ノット=ペルシャ結び」「ダブル・ノット=トルコ結び」と説明されることがあるようですが、これは上の意味を取り違えた誤った解釈です)



いまなお戦乱がつづくアフガニスタンの人びとはどんな思いで暮らしているのでしょうか。
一日も早く平和と安定が訪れ、人びとに笑顔が戻り、
また素晴らしい絨毯が織られる日々が来るように願っています。

2011.09.02 Friday

アフガン ウズベク族のGhudjeri(ガジャリ)織り

 
アフガニスタンの毛織物をもうひとつ。
ウズベク族の「ガジャリ」もしくは「グジャリ」といわれる毛織物です。



一般的なキリム(平織り)は横糸に色がついていて、横糸が表面に現れますが、
ガジャリ織りは経糸に色がついていて、経糸が表面に出ます。



こちらは裏面になりますが、上下に厚い糸束が通されていますね。
ガジャリは15cm〜30cmの細長い織物を何枚もつなげていって一枚の毛織物になります。
このガジャリは、約30cmの織物を8枚ほどつなげたものです。



ガジャリ織りには色彩のコントラストがはっきりしたものが多いなか、
このピースは色合いがまったりしていて、おおらかさを感じさせます。



どちらかというと夏のインテリアに似合う色合い。

茜部分はやさしい朱色、緑部分もやや若草の味わいがあります。
黄土色って、ふつうは「綺麗」なイメージからは遠い感じがしますが、
水色にちかい薄めのインディゴとの取り合わせで、素朴な美しさを感じさせます。



ガジャリ織りは一般的にフリンジ部分が纏(まつ)られていて見えないのですが
これはフリンジが出ています。
このフリンジが「横糸」ということになります。



横糸は生成りのウール。
経糸と横糸では別のウールを使うこともよくありますが、
このピースも、経糸のほうが細く柔らかい糸を使っている感じがします。



ガジャリ織りの特徴は、縦に織られる構造のせいもあって、しなやかなこと。
布に近い感触で曲がるので、床に敷くよりもカバーリングに適しています。
ソファーにかけてもよし、見せたくない家具を覆うのもよし。



インテリアに使いやすい毛織物なので、日本にももっと広まってほしい毛織物です。
日本では発想が、つい「敷く」ことに行ってしまいますが、
カバーリングや壁に飾る使いかたがもっとポピュラーになるといいなあ。



ウズベク族のガジャリ織りを目にする機会がありましたら、
ぜひぜひじっくり見てください。
日本のインテリアに馴染みやすいアイテムです。

2011.08.27 Saturday

ウズベク・タタールのキリム

 先日「ハザラ族のキリム」をご紹介したときに
「タタール」が「ハザラ族の別名として使われることがあるようだ」、と書きました。

あの後、「タタール・キリム」として購入したキリムを眺めていましたが、ずいぶん印象も違います。
ネットで間違った情報を流すのも良くないなと思って、ちょっと調べてみました。

絨毯やキリムの種類を知りはじめたとき、
それを織ったトライバル・グループの名前(トルクメンやバルーチなど)が使われるときと
キリムが織られた大体の場所(トルコの場合、マラティアやシバスなど)、
さらには織物の集積地地名(イランの場合、カズビンやシラーズなど)が使われるとき、
いろんな名称が混在して、面くらった記憶があります。

さて今回の「ハザラ&タタール」を考える際に、アフガニスタンの主な集積地を見てみましょう。



ヘラート、カライナウ、マイマナ、サリプル、ラビジャール、チャルチャガン、モコール
などが主な集積地となっています。
国土の中央を右肩上がりに走っているのが、ヒンドゥークシュ山脈です。

先日ご紹介したハザラ族のキリムは、おそらくサリプルで売買されたものだと思われます。

アフガニスタンはパシュトゥーン、タジク、ハザラ、ウズベク、トルクメン、バルーチなど
が住む多民族国家であり、それがまたいくつものトライバル・グループを形成しているので
わたしには非常にわかりにくいところです。

バーミヤンの近くのハザラジャード周辺に住むハザラ族は
イスラム・シーア派だといわれていますが、
カライナウ周辺のハザラ族は、「チャハール・アイマック(四つの遊牧民)」という集団に属していて
イスラム・スンニー派とされており、区別されています。

さて、問題の「タタール・キリム」として購入したキリムをご紹介します。



「タタール」=「ハザラ」とすると、これもハザラ族が織ったものかと思っていましたが違うようです。
何冊かの本を当たってみて、一番信頼がおけそうな
"Oriental Rugs Volume3 The carpet of Afghanistan"によりますと、
このタイプのキリムは、ウズベク族のものとされています。

「タタール」は、ウィキペディアを一応信頼するとして、それによると
北アジアモンゴル高原から東ヨーロッパリトアニアにかけての幅広い地域にかけて活動した
モンゴル系テュルク系ツングース系
の様々な民族を指す語として用いられてきた民族名称」
とされていて、とても幅広く使われているようなので、
アフガンのハザラ族も、ウズベク族も、「タタール」とされているようなんですね。

ということで、先日のキリムと今回のキリムは別のトライバルグループのものだとわかりました。



ウールはちょっとパサパサしていますが、カワイイ色と文様です。
ちなみに上記の本によれば、アフガンの羊は
カラコル・ギルザイ・カンダハリー・ハザラギー・バルーチなど
主に5種類が使われており、品質もピンからキリまであるようです。
このキリムには「ギルザイ」ウールが使われているとのこと。



なんか、うねってますね〜。
トライバルのものは多少歪みがあるのが普通ですが……



あらら〜
小鳥たちが下のほうへいくとお魚(サンマか太刀魚?)たちになっちゃいました〜!



この歪み方は、けっこうすごい!
……
まあ織っているひとも人間ですから、その日の調子もあるので
「だりぃー!」とか言いながら織ったのかなあ?



「いい味出してるじゃん」って、ワタシ的には好きですけど……

が、しかし、仮にキッチリ派のトルクメンのお母さんだったら
娘がこんな歪んだものを織ってたりするのを見たら怒るかな?



裏はこうなっています。



絨毯やキリムを見ていると、頭にいろんなこと(妄想も?)が浮かんできます。
機械が織ったものではなくて、人間が織ったものだから
その個性にいっそう愛着がわくような気がしませんか?

2011.08.19 Friday

ハザラ族のキリムと「黄金の羊」

 最近、首都圏の最高気温は35度くらいの日が多く、
我ながら、パイルの写真をアップする時期でもないのは分かっております。
反省を兼ねて(?)、やや夏向きのキリムをご紹介しましょう。



アフガニスタンのバーミヤン周辺にすむHazara族のキリムです。
ハザラ族の顔つきは日本人とよく似ていると言われていますね。



すべて天然染料だと思いますが、おススメはベージュに見えるウールです。
染めていない、生成りのウール。
画像ではうまくお伝えできなくて残念ですが
つねづね私は「黄金のウール」と呼んでいます。

あるサイトで、「ハザラ族は販売用のキリムと自家用のキリムとでは異なるウールを使う。
かれらが自家用に使うウールはとても質が良い」という記事を見ました。

私はそれほどハザラ族のキリムについて知らないのですが、
「タタール・キリム」として購入した別のキリムのウールは、確かにちょっとパサパサしています。
そのキリムは「販売用」だからなのでしょうか?

「タタール」はハザラ族の別名として使われることが多いようですが
もし間違っていましたら、どなたか教えていただけると助かります。



この写真が一番実像に近いのですが、
「いぶし銀」ならぬ「いぶし金」とでも表現したいような黄金のすばらしいウール。
コシがあって、つややかです。

(なお、この写真の手前の赤は「ピンク」に近い赤です。
一般的に「ピンク」という色は化学染料の代名詞のように思われているようですが
天然染料と思われるピンクも少なくありません。)



きっちりとした織りで、厚みもそこそこあり、実用に耐えるキリムです。
横長の織目は、見ているだけですがすがしい。



横糸を通しながら、規則正しいリズムを伴って、
「タラク」とか「シャーネ」と呼ばれる鉄の櫛を打ち込んでいる姿が目に浮かぶようです。
織りの熟練度は、鉄の櫛が奏でるリズムを聞いただけでわかるとも聞きます。

空と大地のあいだで奏でられる遊牧民の音楽。



片方のフリンジはほどけておらず、ほぼ原形をとどめています。
実物は写真で見るよりもずっとつややかです。



このキリムを譲ってくれたひとは
「ハザラ族がいつまでもこのようなキリムを織り続けてほしいと思わせるような秀作」
と言いました。

美しいことばです。
わたしもそう思います。

人間と羊とのかかわりは、気の遠くなるような昔からつづいています。

まぼろしの「黄金の羊」。
いったい、どんな姿をしているのでしょうか?

2010.11.12 Friday

バルーチ ソフレ


 前回のカシュカイ・キリムの赤は、スコーンと晴れた色でしたが、
今回は、その対極ともいえる渋〜い赤をご紹介します。

「渋い」といえば、やっぱりバルーチでしょう。
これはアフガニスタンのもの。



今回は写真を屋外で撮ることができなかったので、
実際のイメージがあまり伝わらずにゴメンナサイ。



キリムや絨毯の「赤色」に使われる染料の基本は、「茜(アカネ)」です。

東アジアから西アジアにかけて広く自生する西洋アカネ(madder)の根で染めますが、
若い根より年数の経った根の方が、より暗めの赤になるようです。
たとえば3年物より6年物のほうが濃い紫っぽくなるらしい。
染める温度や時間、媒染剤によっても違うとか……



裏側です。
浮き織、緯紋織を使って分厚く織られています。
135cm四方くらいの大きさなのに、マジで重い!



これはパンを作るとき、この上で小麦粉をこねたり、
焼いた後、さめないように、また汚れないようにパンをくるんでおくための
「ナン・ソフレ」と聞きましたが、
これだけ豪華な飾りがあれは、この上で食事をしたのかもしれません。



食事のためにつくられた「ソフレ」なので、
わたしはどうしても下に敷いて足で踏むことができません。
壁に飾ってもステキですが、テーブルにかけても、ほら、このとおり!

バルーチは日本の家屋によく似合います。

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