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2015.12.19 Saturday

村の女たちの歌 カモ・ソフレ


サティシュ・クマールのお母さんの言葉は深い。

「私にとって、時間は使い果たしてしまうものじゃなくて、いつもやって来るものなのよ」も意味深いけれど、
「私はまさにショールを作るためにショールを作っているのよ」という言葉にも考えさせられた。

わたしたちは朝起きてから眠りにつくまで、
その行為のために行為をする、ということがどれほど出来ているだろう?
ほとんどは「タスクだからやっている」ように思える。

料理、掃除、洗濯といった家事も、
電車などでの通勤や仕事も、
「やらなきゃいけないから」「世の中はそう流れているから」やっている。

でも、これって、ある意味もったいない。
自分が行なっていること、それがどんな些細なことであれ、
行為を味わい、楽しむ方が、ずっと楽しくないだろうか?

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さて、絨毯やキリムにもいろいろあるが、今回はイランのKAMOという村のソフレである。

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Parvis Tanavoli という人の本まで出ている。
表紙の写真には、大きなナン(パン)が何枚も写っている。
その下に敷かれてあるのが、ソフレ=パン用のキリムなのだ。

この本によると、カモ村では各家庭に二枚のソフレがあるという。
一枚は小麦粉をこねるトレイの下に敷くソフレ(小麦粉で床を汚さないにように)、
もう一枚は焼きあがったパンを包むためのソフレ。

ほとんどの家庭では、この二枚のソフレにほとんど違いはなく、
使い古した方を、小麦粉をこねるために使い、
新しくて綺麗な方を、パンを包むのに使っているようだ。

細長いキリムで「ソフレ」と呼ぶものは、だいたいその上に料理を並べるダイニング・クロスだが、
カモ村では、そのタイプのソフレは使わないようだ。
形もほとんどが正方形に近い。

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カモ村はどこにあるかというと、
この地図の右下の Joshaqan や Meimeh (ともに絨毯産地)の辺りらしい。

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なんとなく懐かしいようなカモ村の風景。
冬の寒さを除けば、水がたっぷりあって比較的温暖で暮らしやすい村とのこと。

著者のタナボリ氏は1988年ごろテヘランのバザールに突如現れた、素朴なソフレに魅了された。
あまり見かけないデザインで、一枚一枚に個性がある。
すでに"Bread and Salt" という本を出していたタナボリ氏は、たくさんのソフレを見てきたが、
こんなユニークなソフレははじめてだった。

それらは最初「バラミン」(有名なキリム産地)の産地名で売られていたが、
その産地名が実態とちがうことに気がついたタナボリ氏は
いろいろ調べて、これらのソフレが「カモ村」というところで織られていることを突きとめた。

カモ・ソフレの本には44枚のピースが載っているが、本当にそれぞれが個性豊かなのだ。

カモ村のソフレはユニークだけれど、同じ村の女たちが織る絨毯はちがった。

近郊のカシャーンやジョシャガンの絨毯に近い伝統的なデザインで、
これは、いざ絨毯を売って現金に換える必要が出たときに、
奇抜なデザインよりも無難に売れるからではないか、と氏は考えている。

カモ村のソフレは、売ることを前提としていない。
だから村の女たちは、一定のパターンはあるものの、
自分な好きな色と好きなデザインのソフレを、自由気ままに織ったのではないか? 

「だからこれらの織物は、手工業のワクを超えてアーティステイックになった、と私は思っている。
これをアートとは呼ばない人もいるだろうが、アートに近い、ことには納得してもらえると思う」

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と、タナボリ氏が惚れこんだカモ・ソフレ、
これは絨毯屋のトライブさんから譲ってもらった。

もともと小さな村のものだから、
ほとんどはコレクターの手に収まり、いまはほとんど流通していないのではないだろうか。



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このソフレは、本でいうとこのタイプに近い。
左右がギザギザのパターンで、中央に「メダリオン?」のような焦点がある。

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たぶんすべて天然染料と思われるが、
カモ村周辺に自生する植物を中心にした染料だろう。

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紫色は、イランの他の地域のもので似たような色を見たことがあるけれど、
この緑はかなり強い色。
染めむらからケミカルではないと思うが、トルコをはじめ他ではあまり見ない緑色。
茜も強い色で、年数のいった根を使っているのだろう。

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今はやりの「グレージュ」はたぶん羊の原毛のまま。

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織り目は比較的ゆったりして力強い。
中央の白とピンクはコットンで、より素朴さが感じられる。

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端はコットン糸を使ってこのような処理になっている。

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パンを包むのに都合良いよう、しなやかに曲がる。
一見、重たそうにみえるけれど、実際持ってみるとけっこう軽め。

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このソフレのいちばんの魅力は、やはりこのギザギザ紋。
色と線がとても自由だ。

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タナボリ氏が「手工業を超えてアート」というのがよく分かる。
氏が言いたいのは、「手工業」は型に収まり作り手の個性があまり感じられないものが多いけれど、
カモ・ソフレを見ていると、織った人の気持ちが伝わってくるでしょう?
ってことだと思う。

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穏やかな村の女たちがうたう、それぞれの歌。

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「美しく、役に立ち、長持ちする」手仕事。

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たたむとこんな感じです。
一日の役目を終えて、しばし休息するソフレ。

明日はまた、家族のパンのために、しっかり働いてくれるよね。ゆう★
 
2013.06.14 Friday

ケルマンの小さなラグ


私が持っている絨毯はほとんどがトライバルラグですが、これは村で織られたと思われる絨毯です。
中央にメダリオンがある「ペルシャ絨毯」っぽいデザイン。
産地はケルマンということで、代金は75ドル、送料合わせて一万円ちょっとでした。

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写真下側に写っているように縁が全体に擦り切れていて、フィールドもすり減っています。
右と左の幅もすこしちがっているので、特に良い絨毯というほどではありません。

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それでもこの絨毯が欲しくなったのは、モティーフのラインがのびのびしていて可愛かったから。

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裏側です。デプレスが効いた織りなので、耐久性があります。
濃い緑などはケミカルかもしれませんが、水色やピンクなどほとんどの色が天然染料みたい。
マゼンタ色はコチニールでしょうか? 

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ケルマン絨毯は花模様が多いようですが、
このピースはお花も葉っぱも生き生きとして、見ているうちに心がなごんできます。
コーナーに使われている水色がとても好き。でも反対側は水色じゃなくてオフホワイトです。
このへんのユルさが、工房ではなく、個人の家で織られたものの面白さでもあります。



ほら、反対側には水色が使われていません。

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これを織った人は、きっと心のやさしい人なんだろうなあ……という気がしませんか?
なんだか、ほわっとしてる。

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パイルがすり減っている左側の部分、結び目が表面に現れていて、そこがキラキラ光ります。
パイルがなくなった絨毯をじっと眺めるようになったら、すでにオタクへの道に足を踏み入れた証拠です。

<番外編>

自分が絨毯の世界に没入してしまうと、しばしばヘンな妄想が……

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勝手にストーリーとかこしらえて、あらぬ妄想にふけるのです。
この絨毯はお花たちがキャラクターに見えてきました。
お花のボスが子分たちを連れてどこかに行こうとしています。

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リーダーを先頭に、いさましく出かけるお花たち……
「ボ♪、ボ♪、ボクらは少年探偵団!」

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こっちは、「世界の中心で愛を叫ぶ」お花たち。
「○○○〜!(←各人でご自由にお入れください) 愛してるよ〜!」

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「お花の歌舞伎座」を上から見たところ。
黄色……見栄を切る花形役者
青……それを引き立てる役者
緑……着飾った贔屓客ゾーン

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お花の幼稚園。右側がセンセイ、その左が子どもたち。
「かごめかごめ♪」を踊っているところ。古っ!

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さっきも出た同じモチーフですが(上下逆にしただけという意見も……)、また別のイメージが湧いてきました。
「“かごめかごめ”なんか、ガキっぽくてやっていられるかっ!」ってんで、幼稚園から脱走するグループ。
悪ガキは約1名で、あとは「ママにしかられる〜」と心配な、おとなしい子たち。

……

とまあ、絨毯を見ながらいろいろ想像するのも自分では楽しいのですが、
絨毯に見入っているトコロ、人に見られたら絶対ヘンだと思うでしょうね。(^_^;)

2013.05.30 Thursday

ジャフ・クルド Jaf Kurd のホルジン(片側)


梅雨入りもしたことですし(←理由になっていない)、今回は手抜き記事です。

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ジャフ・クルド Jaff(Jaf) Kurdのホルジン(袋)の片側です。
ジャフ・クルドは、イラン・イラクの国境あたりに住むクルド族の支族と言われています。 

近くにはセネ(現在はサナンタジ)があり、そこでも多くのクルド人が絨毯を織っていますが、
古くから商業用の絨毯産地であり、いわゆる「ペルシャ絨毯」のイメージのものが多いです。

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それに比べると、ジャフ・クルドのものはトライバル色が濃厚で力強さを感じます。

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「ジャフ・クルド」として市場に出てくるのは、なぜかほとんどこのような袋ばかり。
絨毯の本で、これと似たようなモチーフの小さなラグを見たことがありますが、とても珍しいようです。

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ジャフ・クルドの魅力は、脂分の多いしっかりしたウールと発色の良さ。

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枇杷のような黄色は、他のトライバルラグであまり見かけない色。

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このピースには紫が二色使われています。
どちらも茶色がかった紫ですが、ダイヤモンド型の中は薄めの紫、
右下にのぞいているアニマル・ヘッド(動物の頭)モチーフは濃い紫。

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この写真の一部だけ取り出すと……

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薄めの紫

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濃い目の紫、となります。

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ご覧のようにかなり使い込まれたコンディションですが、部族絨毯にハマると、それすらが魅力になるのです。

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裏側の「つぎ当て」なんか、もう愛しくて〜!(笑)

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生成り色をベースにしたボーダーの「S字」の感じがとても好き。

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線に力強さがあります。ここらへんは織り手の個性が出るところ。

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クイッ、クイッと織りこまれた線からは、リズムと躍動感が感じられます。
鉄の媒染剤を使ったと思われる茶色のパイルがすり減って、レリーフみたい。
部屋の中だといま一つ色の美しさが感じられませんが、
屋外で眺めると、ウールの艶と発色の良さがよくわかります。

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この裏側も、アブラッシュ(色むら)が見飽きないんですね〜



インディゴ、深緑、黄緑、紫……どれをとっても味わいのある色です。
ある日本の染色家が「草木染めはたとえ色褪せても、決して下品な色にはなりません」と言ったそうです。
本当に、そう、思います。

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色だけでなく、見てください、この「バック・シャン」。



念入りなソマックが施され、袋の裏といえども手がかけられています。
ホルジンはロバなどの背にかけられて、かなり重いものも運んだようですが
このようなソマックやジジム織りには、袋をより丈夫にする働きがあったと聞きます。
実用面での強化と美しさが一体である「用の美」、
そこらへんがトライバル・ラグの原点なのかもしれませんね。

2012.07.13 Friday

ホラサン地方のグーチャン・クルドについて


クルド族の毛織物についてなにか書こうと思うのですが、
どこの地域のものか、あるいはトライバル・村・町の工房のどれかによって違い、
とてもバリエーションにとんでいます。

前回ご紹介したちいさな毛織物はパイルが長めでカラフルですし、
昨年の8月7日にご紹介した東トルコのクルド絨毯も、長めのパイルにゆたかな色彩が特徴でした。

一方で、イランに住むクルド族が織るセネ絨毯は、セネ・キリムと同じくとても精巧に薄く織られているようです。
セネやビジャーのクルド族はかなり早い時期から定住し、「商品としての絨毯」を織るようになったのでしょう。

* * *

ちなみにセネ・キリムは、まだキリムの価値が認められていなかった時でさえ「ブランド」として君臨していたようです。
1931年出版の"Facts about oriental rugs"という本に、興味深い内容が書かれています。

「Kelimというのは、ナバホ・インディアン・ラグのようなもので、ペルシャ・コーカサス・トルコの一帯で織られているが、
こんにち市場で売られているのを見かけることはめったにない。
その理由は二つあって、ひとつは一定の需要がないこと、もうひとつは同じ労働をするなら絨毯に比べケリムは儲からないからである。
だが例外が一つあって、それはセネ・キリムである。
もっとも織りが細かく、もっとも美しく、もっとも高価であり、壁掛けや椅子などのカバーに使われる」

1930年ごろのアメリカの絨毯市場で、セネ・キリムだけは別格の存在として認められていたんですね。

世間話になっちゃいますが、いまではむしろ絨毯よりキリムの方が高い場合があります。
(古くて質の高いものに限りますが……)
キリムは絨毯に比べて耐久性に欠けることや、コレクターがキープしていたりで、市場に出回る数がどんどん減っているみたいです。

* * *

さて、話を本題に戻します。
グーチャン・クルドといえば、ラクダの毛を使ったギザギザ文様の細長いソフレが有名ですし、
さまざまな色彩を使いながらも、やや暗めの印象を与えるソマック織りなどもありますが、
きょうは前回ご紹介したピースに似たタイプのクルド絨毯について見ていきましょう。


『丸山コレクション 西アジア遊牧民の染織』 −たばこと塩の美術館カタログよりー

特徴的な黄緑色や黄・紺・茜・白などの色づかいが似ていますし、キリムエンドのジジム織り、
小さなモチーフをちりばめた感じや長めのパイルなど、かなり前回のピースに似ていませんか?
グーチャン・クルドのひとつのタイプなのかもしれませんね。


 "Tribal rugs" by B.W.McDonald より

じつは、この絨毯はグーチャン・クルドのものとは記載されておらず「ペルシャのクルド族」という説明なのですが、
モコモコしたパイルの感じとフニャフニャとした織りが似ている気がします。
この絨毯の面白いところは左ボーダーの部分。
たぶん下から織りはじめていって、どうも幅が狭くなっていることに気づいた織り手が、
左側に予定していなかったボーダーの文様を織りこんでいったみたいです。
「商品」としての絨毯なら許されない失敗ですが、こういうところを「味」と見るのがトライバル・ラグの愛好者たち。


"Oriental rugs" by M. Eiland Jr.&掘,茲

この絨毯は、「北西イランのクルド族」もしくは「ホラサンのグーチャン・クルド」のどちらとも取れると説明されています。

前回、クルド族の居住地域の地図を掲載しましたが、
「クルディスタンから見て、なぜグーチャン・クルドだけポツンと離れているの?」という疑問がありました。
本によって記述に若干のちがいがあるのですが、大筋は以下のようなことらしい。

「ペルシャ中央政府が17世紀から18世紀にかけ、クルディスタンに住んでいたクルド人の一部を
中央アジアとの交通の要衝であるホラサン地方に強制的に移住させたのがそもそもの始まりだった。
当時は、ヨムートあるいはテッケ・トルクメンがしばしばペルシャ領内に侵入してきて
ホラサン地方のクルド人は幾度にもわたる受難を強いられた。
やがてロシアが加わって1881年に和平条約が結ばれてからは、ホラサン地方に繁栄が訪れた」。

うーん、大変だったんですね……。

いずれにせよ、上の絨毯がクルディスタンのものともホラサンのものとも取れるというのは、
クルド絨毯の織りの構造やデザイン・色などが共通しているということを意味しています。
遠く離れても、クルド人のアイデンティティが絨毯を通して引きつがれているんですね。

* * *

ここで終わらないのが部族絨毯の興味深いところで、
ホラサンのグーチャン・クルドが自らのルーツを保持しつつも、他の部族の影響も受けていったのではないか?
そんな思いも浮かんできます。

"Tribal rugs" by James Opie より

わたしは絨毯の専門家でも何でもないので、間違っている可能性が十分にあるのですが、
19世紀後半とされるこの絨毯のボーダーの文様は、古いクルド絨毯ではあまり見かけない気がします。
これはホラサン地方の、バルーチあるいはトルクメンから影響を受けた結果かも?

もっとハッキリしているのがつぎの絨毯。

 "Tribal rugs" by B.W.McDonald より

これはバルーチに典型的なデザインや色づかいなので、最初「バルーチ絨毯」として扱われていたのですが、
織りの構造などの分析の結果、ホラサン地方のクルド族のものとされるようになったとのこと。

ホラサン地方に住むクルド人が、バルーチの絨毯を見て「まねっこ」したのでしょうか。
なぜ「まねっこ」をしたのか?
単に「いいなー」と思って、似た絨毯を織ったのか、
それとも、「売れ筋商品」として絨毯を織る時代が始まっていたからなのか、
謎はまだまだ尽きません……

2012.07.06 Friday

クルド族の可愛い毛織物

 
今回はイランの北東部に住むクルド族の毛織物をご紹介したいと思います。



イラン・ホラサン地方の近くに住むグーチャン・クルドと呼ばれるグループのものです。



クルド族はトルコ・イラク・イラン・シリアにまたがるクルディスタン(クルド人の土地)を中心に住んでいますが
イランとトルクメニスタンの国境近くのQuchan周辺にも暮らしています。



このピースは、グーチャン周辺に住むクルド人が織ったもののようです。



大きさは35cm×75cmくらいで、クッションの表皮だったのでしょうか?
トルコではヤストゥック、アフガンではバーリシトなどと呼ばれますが、
たいていは50cm×100cmとか、これよりも一回りは大きいものが多いので
こんな小ぶりなバックフェイスはめずらしい。



柔らかく、かつ腰のあるウールか使われていて、艶があります。



このピースはとりわけ緑の表情がゆたか。
牧草を思わせる黄緑や、ちょっとエメラルドがかった青っぽい緑など、
ありとあらゆる表情の緑が、ちいさなピースの中にちりばめられています。



真ん中のモチーフはよくクルド族の絨毯にみられる文様です。
端のキリム・エンドにはそれぞれジジム織りがされていて、とてもカワイイ!
こっちはV字のようなジジム。



こっちにはおなじみのS字モチーフ。
赤茶色の横糸に、インディゴ・緑・紫・黄・白でジジムがほどこされ、その上下のインディゴと白のラインがココロ憎い!



裏はこんな感じ。デプレスはなく、柔らかくしなります。



まっ白な経糸のウールはふかふか!
パイルの手触りも最高!



三つに織るとこんな感じですが、バッグにしちゃおうかな―。
大きさもちょうどいいし、絨毯にしては重くないし、横を縫い合わせて取っ手をつければイケるかも?



小さな花の模様を中心に、たくさんの色が散りばめられています。
ラインもぴしっと整ったものではなく、ちょっと歪んだりしているところがかえって楽しい。
子どもの絵のように、見ている方の気持ちもなごむ感じがします。



かわいい、かわいいグーチャン・クルドの毛織物。

2011.09.28 Wednesday

シャーセバンのマフラッシュパネル


先週、トライバル・ラグにたいへんお詳しい絨毯屋TRIBEの榊さんと、
美しい世界の手仕事展といったイベントで大活躍の手仕事クイーンTさんが
遠路はるばる我が家にやってきてくださいました。



ずいぶん涼しくなって、絨毯を広げておしゃべりするにはちょうど良い秋の一日でした。



わたしは、自分の集めたものでも
「これはバルーチ」といったざっくりした区分しかわからないのですが
さすがに榊さんは、「これはホラサーン」「これはシスタンあたりでしょう」と
同じバルーチでも織られた地方がすぐに判ります。

あ、ちなみに今回の写真はシャーセバンというグループのもので、
以前にもご紹介したマフラッシュという収納袋の一部(パネル)です。



Tさんは、手先がとても器用でご自分でも絨毯を織られます。
絨毯を見るだけで、専門的な織りの構造はもちろんのこと、
「この人は最初お決まりのパターンで織っていたけれど、
それを崩したほうがおもしろいと思って、どんどん自由に織っていったんじゃない?」
とか、織った人の気持ちの流れまでも読めるんです。
すごい!



絨毯を眺めながらお二人の話を聞いていると、とても勉強になります。
なかなか近所には絨毯好きの友達もいませんし、
「朋(とも)あり遠方より来る、また楽しからずや」……です。



さて、このシャーセバンのマフラッシュ・パネルですが、とてもいいものだと思います。
まず、織りがとても細かく、上手です。
染色もすばらしい。
たくさんの色が使われていますが、わたしは特にこの赤紫が好き。

紫というとコチニール由来のマゼンタがかった紫
バルーチ系のタイムリなどに見られる青紫
あとはイランの北の方の、植物由来と思われるすこし薄めの紫などがありますが、
赤紫というのはめずらしいと思います。



このパネルは織りが細かいので、布に近い薄さです。
以前ご紹介したジジム入りのマフラッシュを再度掲載します。



こちらはかなり厚みもあって頑丈にできており、いかにも実用品です。



シングルの羽毛布団を二枚入れたところです。



でも、こちらの繊細な感じは、実用品というよりも
婚礼といった儀礼のためとか、装飾のため、
あるいはとても大切なものを入れるといった
特別の用途をもっていたような印象を受けます。



経糸も横糸も細く、やさしい感じです。
こんな繊細な織物に重い布団なんか詰め込む気になれません。



みなさんはどう思われますか?

こんな素朴な疑問も気兼ねなく話し合える場として
Facebook に「じゅうたん倶楽部」を立ち上げました。
ご興味のある方は、ページ右上のLINKをどうぞご覧になって
「トライバルラグソサエティ」という所をクリックしてくださいね。

じゅうたんやキリムが好きな人ならどなたでも大歓迎です!
ご参加をお待ちしています。




2011.07.30 Saturday

シャーセバン マフラッシュ パネル

 前回アップした、コーカサスのボロボロじゅうたんの文様ですが……



何回見てもユニークであります。



この文様に、ちょっとだけ近いものを持っていました。



北イランからコーカサス地方にまたがって住む
シャーセバンのマフラッシュ・パネル(布団袋の側面)ですが、
この二つの文様に、関係性があるのかはわかりません。
シャーセバンの方の文様は「松ぼっくり」に似ていますね。



シャーセバンの織りは整っているものが多いのですが、
このピースも構図が決まっています。



色合いもバランスがよく、洗練された雰囲気です。



黄色ややさしい緑色がいい感じ。



インディゴの濃淡も味わいがあります。



大きさは50cm角くらい。
この上に、シンプルな白木のスタンドライトを置いたりして楽しんでいます。

2010.11.10 Wednesday

カシュカイ キリム

 さて、今回はギャッベの延長線ということで、
カシュカイ族のキリムをご紹介しましょう。



このキリムの特徴は、発色が良いこと、
油脂の多いつややかなウールが使われていることです。

室内では、発色の良さがじゅうぶん撮りきれないので屋外へ移動……



実物はもっと輝いているんですが……
室内で撮った写真よりはずいぶんよくなりました。

化学染料とまちがわれそうな鮮やかな色ですが、
すべて天然染料と思われます。
白い部分はコットンです。

かなり古いものである証拠に、コットンがややフェルト化しつつあります。

そうそう、このキリムの特徴がもうひとつありました。
あちこちに、髪の毛が一緒に織りこまれているんです。

最初はうっかり髪の毛を巻き込んでしまったのかと思いましたが、
それにしては多すぎます。
「幸せな結婚」や「家族の幸福」など、願いごとを織りこんだのでしょうか?



ちっちゃなふさ飾りをつける遊びごころ。

不思議だったのは、
ボーダー部分の中央に見える薄茶色だけ、質感が違うこと。
他の部分はウールの毛羽が取れてつやつやしているのに、
薄茶色だけは、なんだかボソボソしているのです。

やがて謎が解けました。
薄茶色は、染めないラクダの毛を使っていたのです。



オフホワイトだけでなく、茶色も混じった経糸。
フリンジも立派に残っています。

緑・オレンジ・赤・水色……どの色にも透明感があり、澄んでいます。



おひさま、ポカポカ。



いっしょにピクニックに行きませんか?



誇りを持って織ったことが伝わってきます。



フリンジの下側のインディゴと白の綾織りのところに、
小さな金属の輪が見えるでしょうか?
テント内の間仕切りとして、このキリムを吊るしていたのでしょう。

天然染料も、ゆっくりですが褪色はします。
特に赤色は紫外線に弱いようです。

このキリムはほとんど褪色していませんが、
裏と表を比べると、日光に当たったと思われる側がやや褪色しています。



キリムや絨毯のほとんどに、赤色が使われています。
でも、どの赤色を見ても、「まったく同じ赤」はありません。
カシュカイにもさまざまな赤色があります。

このキリムの赤は、曇りのない赤。
自然の中に生きる、生命の賛歌のようにも思えます。

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