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2016.02.08 Monday

アンティークのトルクメン絨毯の値段2



あ、そういえば、検索ワードに「部族絨毯 バカ」というのもありました。



‥‥‥ガーンネコ



いやー、自分のことをバカって言うのと、赤の他人からバカって言われるのとでは、ビミョーに違いがあるもんですね。あはは。



ショボン ショボン ショボン



* * *



ハイ! 部族絨毯バカのぷぎーです!

バカなので、おかげさまで、風邪ひいてません!

さあ、きょうも元気に行きましょう!



オカネの話は一回でやめようと思いましたが、

みなさんやはりちょっぴり気になるみたいで、アクセス数に反映されてます。(笑)

まあいいや、サザビースのオークションという「非日常」の話だから、ということで前回のつづきをやりましょう。



* * *



まず前回の補足で、高額になるピースの条件について。








前回この「オクバシュ(テントの支柱を入れる袋)」がすごい高額になったとレポートしたのですが、

その理由は「オクバシュ」自体がレアであることもさることながら、

見つかるオクバシュのほとんどはヨムートの平織り
(キリム)で、


テッケのパイル織で19世紀のオクバシュ」は極めてレアであることが超高額の理由のようです。



もうひとつ、このサリークのエンシ。



IMG_2236.JPG



サリークのエンシは、19世紀末から20世紀初めにかけて大量に織られたのですが、

それらは濃茶〜紫系の色合いで、

こちらのピースは、透明感のある輝く赤が使われた18世紀から19世紀のものだとのこと。

そうなると、コレクターの中できわめて人気の高いサロールのエンシ以上に貴重なものになる、

ということで超高額になった模様。



つまり年代が18世紀以前のものや、点数が限定されているピースほど、高額になる傾向があると言えそうです。



このオークションカタログの説明文を読んでいると、

トップクラスのコレクターは、いかに多くの実物を見ているかはもちろんのこと、

トルクメンに関する文献をどれだけたくさん読み、知識を身につけているかが重要なことがわかります。



部族絨毯のなかでもトルクメンは一番研究が進んでいる分野です。

ロシアの研究者によるフィールドワークなども丹念にされていますから、学術的にも信頼性が高く、

「トルクメンコレクターには理数系の知的な人が多い」というのもうなずけますね。



* * *



さて、今回は「サロール・ギュル」が使われたチュバルでも、サロールが織ったのではないものがある、という話です。真性サロールのもの、サリークのもの、テッケが織ったものを比較してみましょう。



トルクメンのなかでも一番ノーブルなグループとされている Salor サロールのチュバル(テントに吊り下げる大型収納袋)はこちら。



IMG_2291.jpg

"ORIENTAL RUGS Vol.5 TURKOMAN" by Uwe Jourdan 1989 より



エンドパネルと呼ばれる下の部分がすこし失われていますが、袋表のほぼ全体が残っています。

「サロール・ギュル」とは、中央部分を占める3つのモチーフ。



ジョン・トンプソン・コレクションのオークションでは、

サロールのチュバルは完品がなく、フラグメントのみが出品されていました。



IMG_2287.jpg



サロールのメイン・ギュルとサブ・ギュル(八角星の模様)は、上の写真のものとほぼ同じです。



しかし専門家にかかると「ボーダーデザインとフィールドに使われている水色が通常のサロールのものとは違う」。

うーん、なるほど。たしかにサロールの水色は珍しいかも。

(‥‥って言ってますが、私、サロールの実物は一度も見たことがありません!

たぶん日本には一枚も入ってきていないんじゃないでしょうか)



19世紀のもので、マゼンタ部分はシルクだそうです。

落札金額は $12075。仮に日本人が落札したら、関税も含めて200万ぐらいになるかな。kyu



IMG_2289.jpg



こちらはサロール・ギュルをコピーした Saryk サリークのチュバル。



「19世紀のもので、白はコットン、クリムゾンはシルク。最高のウールと染料がふんだんに使われている。

サリークの間では19世紀後半にシルクのパイルを使うのが流行った。

また、サリークがサロールギュルを使いはじめたのは19世紀中頃で、

テッケも同じころにサロールギュルを使うようになった」



このピースは、estimate(これまでのオークションで似たようなピースが落札された参考値)$8000-10000 となっていますが

このときは出品者の設定する最低落札価格に届きませんでした。



IMG_2288.jpg

サロール・ギュルを使ったTekke テッケのチュバル。



「19世紀。シルク部分が朽ちている。

フィールドデザインはサロールそのものだが、織の構造、色、ボーダーはテッケ。

おそらくMerv メルブに住むテッケのものであるが、その織物は

より上品に、より高い技術を誇るようになり、オーナメントが激増する傾向を示した。



テッケのチュバルにおいて、サロールギュルは、3個から6個へ、そして9個へ、と数が増えていった。

エンドパネル(下の部分)には、様々な種類の凝ったオーナメントがはちきれんばかりに織り込まれるようになったが、

このピースは、サロールギュルは大きくて丸く、エンドパネルもすっきりしていて、

サロールギュルがテッケに取り入れられたころ見本にされたピースの原型に近いものと思われる」



落札金額は$2515。



この3枚の比較から、アンティーク絨毯に関しては、

織の構造や色、デザインの伝播や変遷史など、様々な要素を総合的に考えて判断する必要があるといえるでしょう。



絨毯を目にしてまず目に飛び込むのがデザインと色です。

実用品として使う分には、自分が気に入ればそれで良いと思いますが、

絨毯のデザインはしばしばコピーされるので、デザインだけではオリジンを判断できないのです。



さて、テッケチュバルのサロール・ギュルの数が増えていくという現象、

これは最初にあげた"TURKOMAN"の本から引用しました。



IMG_2290.JPG



上は19世紀中頃、下は1900年前後のものとのこと。

上はサロールギュルが6個ですが、下は9個に増えています。
全体も過密な感じになり、
サロールギュルがまん丸からひしゃげた形へと変化しています。

「伝言ゲーム」じゃないけど、コピー回数が重なることによって、元のものから変わっていったんでしょうね。
絨毯の世界は奥が深いです。



では、また!




2016.02.02 Tuesday

アンティークのトルクメン絨毯の値段


1月はカマキン関係に気を取られていて絨毯の記事がまったく書けずじまいでした。
最近ネタ切れもあって、絨毯好きの方には「どーも、すいません」状態です。アセアセ

今回は、拙ブログへの検索ワードにあった「トルクメンオールド絨毯なぜ高い」という疑問に関連しての話題です。
たぶん同じ方だと思いますが、「トルクメンオールドキリムなぜ高額」という検索もありました。

その方がどんなピースをご覧になったのか、「オールド」とは何年くらいのピースなのか、
「高い」とはいくら位なのかは不明なので、一概に言えませんが、
絨毯産地や欧米市場では「絨毯やキリムは古いほど高くなる」というのが一般的です。
ここらへんが日本の事情と違うので、戸惑われる方も多いかもしれません。

欧米市場で「アンティーク」と呼ばれるものは100年以上前のもので、それより新しいのが「オールド」です。
ただそのピースが100年を超えているかどうかは、銀食器のような刻印があるわけでもなく、
絨毯のこなれ具合やウールの質や染色、モチーフや構図など全体をみて、取引の経験則から大体のところを推定します。

トルクメンの場合、ある程度古いキリムもありますが、有名なのは絨毯の方です。

特に「トルクメン・コレクター」と呼ばれる人たちが集めるものは、パイル織のものが中心で、
日本人が「絨毯」という言葉で思いうかべる「メイン・カーペット」以外にも、
「チュバル」や「トルバ」などと呼ばれるテントの中につり下げて使う袋や
結婚式のラクダを飾る「キャメル・デコレーション」、矢を入れる「イクセリク」などがあります。
(ちなみにトルクメンの「ソルトバッグ(塩袋)」は写真でも見たことがありません)

「チュバル」や「トルバ」は残っている数が比較的多いので手に入れるチャンスは結構ありますが、
「キャメル・デコレーション」や「イクセリク」などは絶対数が少ないので、
入手チャンスも少ないし、驚くほど高額になるケースが多いようです。

部族絨毯コレクターの中でも、トルクメン・コレクターはちょっと別格でお金持ちが多いようです。
彼らはコレクションによって自分の世界を築こうとしますから、
「ラクダの飾り」や「矢入れ」を自分が日常生活で使うかどうかなんてコトは問題じゃなく(笑)、
レアであればあるほど、どんなに高額でも、手に入れたくなるようです。



ちなみに上の「枕」みたいなのは、テッケ支族の「オクバシュ」というテントの支柱を入れる袋です。
広げた大きさは約60センチ四方ですが、いくらだと思いますか、みなさん?
1993年のサザビーズのオークションで、なんと12650ドル! 
1ドル120円として152万円弱、これに落札手数料15%と送料や保険が加わるので、総額180万くらいになるかもしれません。

生のオークション、私は参加したことがないので、あくまでも想像の話なのですが、
有名オークション・ハウスには「俺のコレクションが一番!」みたいな強者が集まるハズで、
ライバル同士が「負けてたまるか!」って火花を散らせあうケースも大有り。
こういう「レアもの」は「この機会を逃したら二度とチャンスはない!」とばかりにヒートアップするんではないでしょか。ガーンネコ

だから、オークションでの落札金額というのは、その金額が妥当であるかどうかは別問題で、
私にとっては「参考」「話題」以上のものではありません。

ちなみに写真下側の「チュバルの表」(テッケ支族)は2990ドルでの落札で、これはまだ現実的な値段だと思います。

* * *

こういうレアものに興味があるのは、長年のコレクターに限られると思いますから、これ以上取り上げるのはやめて、
今回は同じカタログからメイン・カーペット(いわゆる絨毯)をピックアップしてみましょう。
ちなみに CARPET というのは大型の絨毯、 RUG というのは小型の絨毯のことです。

IMG_2244.JPG

絨毯研究家ジョン・トンプソン夫妻のコレクションというので、とりわけ注目されたオークションだったようです。
日本からは、絨毯屋「トライブ」の榊さんが参加されました。

IMG_2234.JPG
テッケ支族のテントのドアの役割の絨毯(エンシ) 19世紀
$9200

IMG_2235.JPG
テッケ支族のカーペットのフラグメント(端切れ) 18〜19世紀
$8050

チェックしてほしいのは、全体のバランス。
18世紀にかかるほど古い絨毯は、空間がどこかゆったりしているように思えます。

トルクメン絨毯は「ギュル(紋章のようなもの)」の連続の絨毯が多いので、最初はどれも同じに見えますが、
写真も含めてたくさんのピースを見ていくうちに、どの支族のものか、またどれくらい古いものかがだんだんわかってきます。
また、格調の高さや美しさなど「ちがい」も感じるようになります。
逆にいうと、この感覚がつかめないうちに高額の絨毯を買うのはリスクが伴うかもしれません。

IMG_2236.JPG
サリーク支族のエンシ 18世紀から19世紀
$57500

このオークションのトルクメン絨毯で最高値をはじき出したピース。
「トルクメン絨毯といえば赤」ですが、
説明文によると、この絨毯の評価ポイントは「透明感のある輝くような赤」と
「オフセット織の技術によって成し遂げられた、微に入り細をうがつ表現力」
「格調のある空間構成」「のちの絨毯に失われてしまったモチーフの使用」など。

絵画もそうですが、実物の絨毯はものすごいオーラがあるんですよ。
写真じゃやっぱりわからない。 見てみた〜い! きゃvネコ

IMG_2238.JPG
サリーク支族のカーペット 19世紀前半
$11500

このギュルは「グリ・ギュル」と呼ばれています。格調高いピースですね。

IMG_2239.JPG
エルサリ支族のエンシ 19世紀はじめかそれ以前
$14950

エルサリ支族はトルクメニスタン・ウズベキスタン・アフガニスタンにかける広範囲に住んでおり、
このピースはアムダリア川周辺のもの。
いわゆる「ベシール絨毯」の特徴のひとつとして、イカット文様の影響が挙げられますが、
このピースでは「階段状」の白いモチーフがイカット文様で、白にはコットンが使われているとのこと。

IMG_2240.JPG
ヨムート支族のカーペット 19世紀
$4888

絨毯マニアを自称する日本人で、いったい何人がこの絨毯をすばらしいと思うのかしら?(素朴な疑問です、ハイ)
歪んだ形やギュルの大きさの違い‥‥コンディションも良くないです。

欧米のトルクメン・コレクターでも評価が分かれると思いますが、
むしろ、アフガニスタンの「タイマニ」絨毯が好きな人に好まれそうなピースです。
わたし? わたしはけっこうスキです。でもこの値段は高いな。

IMG_2241.JPG
一応「ヨムート」支族、「イーグル・ギュル・グループ」のカーペット 19世紀
$10350

コンディションは良くないですが、「我こそは」と思うトルクメン・コレクターなら欲しがるピースでしょうね。
実物はさぞかしすごい迫力かと。

IMG_2242.JPG
サロール支族のカーペット 18世紀から19世紀
$20125

トルクメン絨毯のなかで、サロール支族はもっとも貴族的なグループで、
そのアンティーク絨毯はもっとも珍重されています。
なのでコンディションは良くないにしても、この値段はサロールにしては低め?
(あくまでも一般論ですよ、一般論! モチロン私には買えませんDocomo_kao8
IMG_2243.JPG
サロール支族のカーペット 18世紀から19世紀
$23000

‥‥このオークションの「いわゆる絨毯」はざっとこんな感じです。
オークションにかけられたけれど、最低落札価格に届かず売れなかったものもありますので、それは取り上げませんでした。

* * *

このブログではあまりお金の話はしたくないので、
「1993年サザビーズでのオークションの値段」ということで、あくまでも参考資料です。

一番大切なことは、予算の範囲内で自分がほんとうに好きだと思える絨毯をえらぶことではないでしょうか。
それでは、また。

 
2015.01.24 Saturday

「SOULな絨毯」をもとめて

 新聞で原宿の文化屋雑貨店本店が閉店することを知った。
20代のはじめ、赤貧洗うが如しであったワタシにも買える値段で、
これまで見たこともないキッチュ&ラブリーな雑貨が買えるお店は、とても素敵なトコロであった。

店主の長谷川さん曰く、
「トレンドが個性的なモノよりも均質化されたモノに移り、ここ1、2年若い人が来なくなった。
いま流行っているふなっしーとか、自分は全然美しいとは思わない。
意に沿わないものを売るよりは、いっそ閉店することにした」と。

これを読んで、なるほど、やっぱりそうだったのか〜、と腑に落ちた。
日本人の嗜好が当たり障りのないモノに移っているのは、もうずいぶん前から感じていたが、
もともと日本人のマジョリティには、あまり「濃い」モノは好まれないと思う。

じつは「濃い」トライバル・ラグが一定程度、受け入れられてきた欧米でも、
最近その勢いがなくなっているのではないかと感じている。

ブッチャケわたしの絨毯の出元はたいてい rugrabbit か eBay だったのだが、
最近はとんとめぼしいものが出なくなった。
出品数はそれなりにあるけれど、心惹かれるものが本当に少ない。

たぶんこれは、トライバルラグ・ブームを牽引してきた世代が高齢化しつつあることが大きいように思う。
それは「ヒッピーの時代」に青春時代を送った、日本でいえば「団塊の世代」と同じような年齢の人たちである。
そして彼らの文化を継承する若い世代の人たちが、ゼロではないにしてもあまり多くないように思える。

さびしーなぁ〜‥‥ゆう★

トライバルラグ・ブームとは、一時的な「流行」に過ぎなかったのだろうか?
そして「トライバルラグなんて、いまから思えば大したもんじゃなかったね」といわれる程度のものなのだろうか?

でも、いーもんね!
自分の思うようにいかないのが世の中だが、
自分の趣味まで世間に合わせることはナイっちゅーの!

まだ部族社会が活き活きと存在していたころの絨毯には、魂がこもっている。
20世紀になって部族社会がその活力を失い、ただ売るための絨毯になってから、その魂は徐々に失われていったけれど、
やはり19世紀に織られたトライバルラグには、ソウルがある。
織った人は、もうこの世にはおらず、
かつて彼女が所属していた部族社会が崩壊してしまっても。

* * *

もっとも「部族の魂」を感じさせる絨毯は、なんといってもトルクメン絨毯だろう。
バルーチに比べると数はたくさん持っていないが、たまに広げて見てみると「やっぱりトルクメンはすごい」と思う。

ただし個人的な条件があって、「ロシア革命以前に織られたもの」ということである。
調度品としての絨毯であれば、トルクメン族が織った絨毯にはいまでもたくさん良いものがあると思う。
あくまでも個人的な趣味で、「SOULな絨毯」が好きなのだ。

‥‥というわけで、トルクメンのミニ展覧会。

P1242992.JPG

トルクメン族には "subtribe" と呼ばれる支族がいくつかあって、今回はTekke と Yomud(Yomut) に絞った。
Ersari も何枚か持っているのだけれど、かなり雰囲気が違うので。 

P1242993.JPG

トルクメン絨毯というと「赤」のイメージが強いけれど、
私はどうも茶色っぽい色合いが好きみたい。

P1242994.JPG

トルクメンやバルーチの絨毯の写真は難しいけれど、これはほどほどに撮れているかな。

P1242995.JPG

テッケのチュバル(テント内に吊るす収納袋)の表。
チュバルはたいてい嫁入り道具としてペアで織られるけれど、
市場に出てくるのはほとんど片方で、しかも裏のキリムをはぎ取られてしまっている。
袋裏が付いていて、しかもペアで揃っているチュバルはとても貴重だ。

このチュバルはギュルの数が6個なので結構古く、19世紀半ばあたりのものだと思う。

P1243009.JPG

このギュルはもともと、トルクメンの中でももっとも"貴族的"とされた「サルーク」という支族のものを
テッケが真似て織りはじめたといわれており、テッケのチュバルによく使われた。

P1243015.JPG

このフューシャ・ピンクはコチニール。上には茜の赤も。
この意匠のチュバルには、ギュルの数が「3個」「6個」「9個」‥とあって、数が少ないほど古いとされている。
あまり価格のことは話題にしたくないけれど、ラグの値段も古いほど高くなる。

P1242996.JPG

絨毯は裏も見てはじめて全体がわかるという。
以前、壁に飾るためトルクメン絨毯に画鋲を刺そうとしたところ、針が入っていかなくて苦労した。
「パイルは短いのにどうして?」と疑問だったが、
絨毯を織っている「手仕事クイーン」と話をしていて、
「トルクメンは縦糸の間隔がものすごく密だ」ということがわかった。

ちなみにネットを見ていてノットの数え方で気になったことがあるのでついでに書くが、
トルクメン絨毯の多くは、絨毯の構造上、「裏側表面に見えるつぶつぶ2つで1ノット」になっている。

トルクメン絨毯全部がそうかというと、そうでもなくて、
アフガン・トルクメンの商用絨毯の一部には「つぶつぶ1つで1ノット」ものもあるし、
友達の家で見せてもらったホジャロシュナイ絨毯も「つぶつぶ1つで1ノット」だった。
この織り方は「2つのつぶつぶのうちの1つ」が絨毯内部に入り込んでいるので、表面からは見えないのだ

けれど、このチュバルのような伝統的な織り方のトルクメン絨毯は、「つぶつぶ2つで1ノット」なので、
ノット数を購入の判断材料として考える人は、このことを知っておいておかれた方が良いと思う。

P1242997.JPG

話がそれてしまったが、こちらはヨムートのチュバル。
テッケが「非対称結び(ペルシャ結び)」なのに対して、ヨムートは「対称結び(トルコ結び)」である。

P1242998.JPG

詳細写真だと比較しやすい。上のテッケの結び目と、なんとなく違うでしょう?
テッケの縦糸はたいていまっ白だが、ヨムートの古いものには茶色い縦糸も見られる。

P1243010.JPG

ヨムートって、この温かみのある茶色がなんとも言えないんだよね。
茜も黄も青も翠も、全ての色が美しい。

P1243016.JPG

「ビロードのような」という形容詞をときどき聞くけど、こういう感じかな?

P1242999.JPG

このピースはブログで初登場のはず。
これもヨムートのチュバルだが、かなり暗いチョコレート色。この写真は明るく写りすぎている。

P1243000.JPG

縦糸は隠れて見えないけれど、裏面を見てもすごくきっちりした織り。

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古いトルクメンのウールはものすごく良いものが多いけれど、
このチュバルのウールは独特の質感で、ゴムのような弾力がある。
ネットだと感触までは伝えられないので残念!

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暗めの茶色と独特のウールのせいか、「生き物」めいた感じのするチュバル。

P1243001.JPG

何回か記事にしたヨムートのトルバ(チュバルより一回り小さい横長の収納袋)のフラグメント。
この記事で紹介しているピースの中でいちばん高かった。
結局コレクション・ピースの値段って、「その値段で買う人がいるかどうか」なんだよね。

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マイケルのおじちゃん、元気かなあ?
カンケーないけど、鶴見俊輔、元気かなあ?

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おじちゃんは「18世紀前半」って書いてたけど、ホンマかいな?
二番目のチュバルと文様が近いので、もう少し新しいかもしれない。
それでもこれを買ったことに後悔はない。

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トライバル・ラグ・ブームを牽引したひとり、
バルーチをこよなく愛する、マイケル・クレイクラフトのおじちゃんの健康を祈る!!

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色が黒っぽく写ってしまったけど、テッケのウェディング・ラグ。
お輿入れのとき、花嫁がラクダの上にこの絨毯を敷いて座るためのものという。

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やはり真っ白な縦糸。
古いテッケの縦糸は、撚りが全部ほどけてしまって、こんなふうにピーン!となっているものが多い。
一方で古いバルーチは、年月が経っても撚りがそのままのものが多いのはどうしてだろう?
ウールの質や工程の違いが影響しているものと思われるが、
トルクメンにせよバルーチにせよ、そのような縦糸を産み出すまでに、大変な労力がかけられている。

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「トルクメン絨毯はどれも同じように見えて違いがわからない」という人が結構いる。
日本にキリムを本格的に紹介された渡辺建夫さんでさえ、自著で似たようなことを書いておられるので、
「渡辺さんまで‥」とガックリくる。

そうかなあ。全然違うと思うんだけどなあ。
「イッパツ、ゴーマンかましてよかですか?」
「その、ナニ、思うにですね、
トルクメン絨毯のキモは、緊張感と優雅さが均衡する空間構成ではないかと思うんですな」
(スミマセン、アホがほざいていると無視してください)

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「ペシペシ!」
(新島襄のようにムチで自分をお仕置きしましたんで、許してやってつかあさい)

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これはテッケの「エンシ」と呼ばれるドアの役目をする絨毯。
以前にも書いたが、上部にミフラブのような形があるため
昔はこの意匠の絨毯は「プレイヤーラグ」と考えられていた。

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他のピースと比べると縦糸が違う。
これは売るために織られた絨毯かもしれない。

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ピンクはコチニールと思われるが、一部には化学染料も見られる。
19世紀末あたりものだろうか。
今回の記事の中ではいちばん新しいものだと思う。

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それでも織りには緊張感が残っている。
トルクメン絨毯がソウルを持っていた最後期くらいのものだろう。

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やっぱりトルクメン絨毯はエライ!

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ソウルな絨毯よ永遠に!
チャンチャンきらきら
 
2014.04.10 Thursday

「春の中央アジア文化祭2014」


4月18日(金)〜20日(日)、東京・西早稲田にて「春の中央アジア文化祭」が開かれます。
中央アジアのさまざまな工芸・人・ものがたりをご紹介するイベント。
ウズベキスタンのアトラス、カザフの刺繍、中央アジアの装飾タイル、
イランの絵本、トゥバ共和国の伝統音楽に、「アトラスでお月見ウサギをつくろう」ワークショップ、
そして何よりも「草原の赤い絨毯」トルクメン絨毯の展示が行われます。

Scan10006.JPG

と、と、ところがですね!
さきほど主催者のフェイスブックをチェックしてみると「満員御礼」の文字が踊っているではありませんか!
会場は「昭和の一軒家」なので、キャパが限られているため、参加の受付はすでに終了せざるを得なくなっているそうです。

Scan10007.JPG

でも4月18日(金)14:00〜16:00にはトライブさんによるトーク「優雅なる野生人」が予定されています。
日本が誇るトルクメン絨毯蒐集家の村田コレクションも展示されますので、
「どーしても、どーしても、参加したい!」という熱い血潮をたぎらせる方は、トライブさんまでお問い合わせください。

わたしもわずか3点ですが、トルクメンのベシールのものを展示していただく予定です。

IMG_6031a.jpg
イカット文様の影響を受けたベシールのチュバル表皮(約156×95cm)
トルクメン絨毯の中ではにぎやかで可愛いタイプです。

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チュバルより小ぶりで横長の収納袋トルバ(?)の表皮(約158×40〜48cm)
上のチュバルはパイルが短めなのに比べて、2cm以上と長めのパイル。
いわゆる「ベシール絨毯」は、トルクメン絨毯の中でも解明されていない部分が多いのですが、
「ベシール絨毯」と呼ばれる絨毯を織るグループは7つ以上ある、と主張する論者もいます。
なので上のチュバルとこのトルバは、別のグループによって織られた可能性が高いと思います。

bt01.jpg
上のトルバより小ぶりのトルバ(約124×34cm)
写真右側の文様が不自然ですが、ボーダーの左側でカットされたものを縫い合わせたピース。
「八角星」は部族絨毯で良く使われるモチーフですが、黄色の「鉤」のようなものがついています。
パイルの長さは1枚目と2枚目との中間くらいです。
アンティークのトルクメン絨毯は、細かい織りで文様もキリッとしていることが評価の大きなポイントですが、
このトルバは文様もユルいし、歪みもあります。

それでもベシール絨毯って、独特の熟成した茜の色や黄色、明るめの青など、何ともいえない魅力があるんですよね〜。
絨毯の魅力はやはり実際に接してみないと伝わらないものなので、一人でも多くの人に観ていただきたいです。
本格的なトルクメン絨毯をご覧になりたい方は、上記トライブさんまでお問い合わせください。

* * *

(追記)

「春の中央アジア文化祭」のトルクメン部門には
テケ(トルクメンの一支族)絨毯をこよなく愛する手仕事クイーンのコレクションも展示されます。
彼女手作りのラクダなどのマスコットも必見!

「絨毯好きの方にどんどん宣伝してください!」とのことですので、
18日のトークショー、トライブ榊さん主催者さんのフェイスブックにご連絡ください。
お待ちしていま〜す!



 
2013.04.05 Friday

Tekke Turkmen Dowry Rug


きょうはまずまずのお天気だったので、
しばらくぶりでフローリングにワックスを掛け、窓やベランダもきれいにしました。
ぜんぜんマメな方ではないのですが、お掃除をした後はとても気持ちが良くなります。
そのかわり、ブログの方は手抜き記事になりました。ごめんなさい。(^_^;)

先日、桜の花をのせて遊んだトルクメン絨毯の詳細写真です。

tdr01.jpg

アメリカのコレクターから譲ってもらった絨毯です。
海外から絨毯を買う場合、たいていは値段や支払い方法など最低限の打ち合わせをしてお金を払い
絨毯が送られてくると、もうそれで取引は完了。
でもこの絨毯のもとの持ち主とは、ちょこっとした会話を楽しんでいます。
私はいつもひどい英語力でやり取りをしているもんだから、
あるメールを出した後、"may"と"must"の使い方を間違ったことに気づき、
「失礼な表現だったかもしれない」と思って、謝りのメールを出したことがあります。
そうしたら彼は、「母語じゃない英語の表現のことで君が謝る理由なんてないよ」と返事をくれました。
「わー、なんかいい人〜!」と思って、いっぺんで気持ちがほぐれました。

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実際に触ってみないとわからないので残念だけれど、抜群のウールが使われています。
上に出ているまっ白な縦糸がつっやつや!
ウールが良いかどうかは、絨毯を広げるとき、てきめんにわかります。
するすると床に吸いつくように広がる絨毯は、質の良いウールが使われている証拠。

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この絨毯を広げたとき、ウールのあまりのすばらしさに「わっ!」と思わず声が出てしまいました。
「質の良いウール」とひと口に言っても、その個性は産地によってさまざまで、
この絨毯のウールはコシがあってしかも弾力がある。「ぷにゅぷにゅ」っていう感じかな?
写真でもウールにとても艶があるのがわかるでしょうか? 

tdr04.jpg

トルクメン絨毯といっても、もちろんピンからキリまであります。
もとの持ち主は相当な数のトルクメン絨毯をコレクションしているのですが、
「自分のコレクションのなかでもトップの部類」だと言っていました。

特にテッケは、トルクメンのなかでも織りが上手でノットも細かいものが多いのですが
ギュルの配列やボーダーが「これでもか!」と言わんばかりのピースは、私はちょっと苦手です。
この絨毯は配列が比較的ゆったりしていて、しかもほどよい緊張感があるし、
赤茶色のベースカラーとインディゴと茶(染めていないウールの色?)に、
コチニールと肌色が加わって、色彩の全体の印象も調和が取れている感じです。

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一か所ギュルの中と左下に補修があり、絨毯の左右がわずかに浸食していますが、まずまずのコンディションです。

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左のセルベッジはオリジナルでなく、補修されたもの。

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絨毯の裏側です。カリカリっ、サラサラっとした感触。
わずかに生成り色の横糸がのぞいていますが、織りが細かいため、ほとんど見えません。

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あー、いい色だなあ……
トルクメンは一般にパイルがそんなに長くありません。
それでも絨毯を撫でると本当に気持ちがいいのです。

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トルクメン、すごいです。
やはり部族絨毯の王者です。

2013.03.23 Saturday

桜とトルクメン


寒い寒いといっているうちに、関東ではあっという間に桜が開花しつつある。
けさいつもの散歩道を歩いていたら、桜は満開を迎える前というのに、地面に花がたくさん落ちていた。
ふつう桜は花びらが散るものなのに、花柄のところで折れたものがたくさん落ちている。
そういえば小鳥の大群がピッピッ!(=日本語に翻訳すると「キャッキャッ!」のカンジ)と鳴きながら桜の木からいっせいに飛び立っていった。
もしかして小鳥が桜にいたずらしたのだろうか?

とにかくこのままではせっかく開いた花が人に踏みつけられてしまう。
できるだけ拾い集めて、持っていた袋にそっと入れて家に持ち帰ってきた。

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さて、どうするか。
桜の花びらはとても薄くデリケートなので、散ったあとは見る見るうちにしおれ乾いてしまう。
せっかく開いた桜の花の美しさを、せめてわたしだけでも堪能させてもらうことにした。

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大皿に水を張り、記念撮影。
きれい。 
桜っていいなあ。
……
しばらく眺めていて、この桜と「トルクメン絨毯」は相性がいいかもしれない、と思いついた。

 * * * 

Tekke Turkmen のお嫁入りに使われた小さな絨毯。
92×107cmくらいで、これをラクダの背に載せ、その上に花嫁が座ったという。

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花嫁の代わりに、お花を載せました。
夕方にはたぶんしおれてしまうだろうお花の美しさを記念して。

* * *

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「花謝(ち)り花飛び飛んで天に満つ
紅消え香断えなば誰ありてか憐れまん」

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中国・清代の『紅楼夢』は、ヒロインが詠った「花を葬る詩」が有名である。

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若いときは正直いって、ああいう感傷的すぎる文学は苦手だったけど
ちょっと読んでみようかな、という気になった。
本だけは買って「積読」してあるんですよ。(苦笑)

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桜のみずみずしさとトルクメンのコンサバティヴさがなぜか似合っています。

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この空気をまとったような花……きれいですねえ。

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よくぞ咲いてくれました、ありがとう。

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テッケのベースカラーは赤が多いけれど、これはほとんど茶に近い色です。
でも、すごくいい色。桜のやさしい色を引き立てています。

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絨毯のうえで桜の花が満開です。

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トルクメン絨毯の裾の模様を「エレム」といいますが、エレムもお花模様。

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2013年3月23日だけの共演。

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無印良品のプラ容器に移し替えてみました。

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光をあびて、ほんとうに綺麗。

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きょうは一日いっしょにいようね。お花さん。




2012.06.16 Saturday

トルクメン絨毯の「ギュル」について


先日ご紹介したトルクメン・ヨムートのフラグメントの説明文で
"Who says Kepse gul weaving aren't old? Lame thinking."
という部分がありましたが、トルクメン絨毯に詳しくないと、わからない言葉かもしれません。

……てゆーか、ワタシ自身よくわかっていないのですが、
どうやら、「ケプス・ギュルが使われた絨毯はそれほど年代が古くない」と言っている人がいて
マイケルのおじちゃんは、「これは250年以上前のものなのに、ケプス・ギュルが使われているじゃないか。
だから、ケプス・ギュルは古くないといったヤツはまちがっとる!」と主張しているようなのです。

* * *

そこで今回はトルクメン絨毯のギュルのお話。

みなさん、この文様に見覚えはありませんか?
今年の2月11日にご紹介した「サロール・ギュルを使ったテッケのチュバル」の文様です。
つまりこれはもともとサロールという支族が使いはじめたギュルの一種なんです。

トルクメン絨毯の特徴といえば、やはり部族の紋章のような「ギュル」。
"Between the Black Desert and the Red" by Robert Pinner&Murray L.Eiland,JR 
からギュルについての説明を拾っていきたいと思います。

「ギュル」について、ペルシャ人とトルクメン人は「花」、トルコ人は「バラ」を表していると言います。
西洋アートの専門用語では「ロゼット」。
トルクメンのフィールドワークの草分け的存在のV.G.Moshkova女史が1946年に
ギュルの違いを識別したそうですが、主なギュルを見ていきましょう。

まずは「Gulli(花)あるいはGushly(鳥)ギュル」4種。

左側がテッケ、右側がサロールのメインカーペットに使われる。

上下ともにエルサリのメインカーペットに使われる。

つぎに「Tauk nuksa gol」3種と「Omurga(temirjin) gol」。


左はヨムート・アラバチ・チョドール・キジルアヤク・エルサリのメインカーペットに使われる。
右はカラカルパクや非トルクメンのウズベクの絨毯に使われる。


上はカラカルパクとウズベク
下はOmurga gol で、サリークとエルサリのメインカーペットに使われる。

そして、いまだに織ったグループが確定されていない「イーグル・グループ」の「イーグル・ギュル」。

色づかいや他のモチーフがヨムートに似ているのですが、ヨムートではないらしい。



上の四つのギュルは、基本的にヨムートのもの。
左上:Kepse gul  右上:C gul  左下:Dyrnak gul 右下:Serrated rosette gul


上はチョドールが使うErtmen gol 
下はサリークやヨムートが使う「チュバル・ギュル」。チュバルギュルなのに「メインカーペットに使われる」?

……こんな感じですが、実際の絨毯の写真も見てみましょう。
ここからは"Tribal Rugs" by Brian W. Macdonald から引用。
トルクメンは支族によって個性があるので、今回はヨムートのものを。





Kepse gul をメインカーペットに使うとこうなります。



Dyrnak gul のメインカーペット。



左上は平織り(キリム)の「チュバル」。テントの中で衣服や料理道具などを収納するようです。
ちなみに市場に出てくるトルクメンの平織りはほとんどがヨムートのものです。
テッケにも平織りのものがあるらしいけれど、わたしは見たことがありません。

左下はチュバルよりも小さい「トルバ」で、宝石や大切なものを収納するとのこと。

右上にちょっとだけ出ている写真は結婚式でラクダを飾るアスマリク。
儀式のためのものなので、立派なものがつくられたようです。

ご覧になっておわかりのように、「赤」と呼べるのは平織りのチュバルだけで、あとは茶色ですね。
トルクメン絨毯はすばらしい赤が魅力ですが、ヨムートの茶色も捨てがたい魅力があります。

2012.06.02 Saturday

超アンティーク? トルクメン ヨムートのトルバ


前回「チラ見せ」したトルクメンのフラグメントをご紹介しましょう。
これはトルクメンでもヨムートという支族のもので、流通しているものではテッケについで多く見られます。


用途的にはテント内の小物を入れるための袋で、チュヴァルよりも一回り小さいもの。
よく「トルバ」とも呼ばれます。これは80×36cm。


左半分。

じつは去年の国際絨毯会議で「なにも買わなかった」と書きましたが、
これはMichael Craycraftのおじちゃんのお店で「いいな〜」とながめていたもの。
案の定、その後も未練たらたらで、連絡をとって手に入れました。


右半分。

あまり値段の話はしたくないのですが、
人から見たらボロキレにしか見えないこのフラグメントはすごく高かったのです。
たぶん日本の皆さんに言ったら「おまえ、バカとちゃうか」と思われると思います。

マイケルのおじちゃんはGALELIE ARABESQUEというネットショップをやっているので、
見てもらえればわかりますが、けっこうリーズナブルな値段のものも多い。
いっぽうで、びっくりするほど強気の値段のものがあり、彼の審美眼にもとづいて決めているようです。
わたしは彼のセンスが好きだし、人間も魅力的だったので、信頼して買いました。



テッケのものは圧倒的に「赤」がメインなのに対し、ヨムートはこんな感じの「赤茶」を使うことが多いようです。
とくにこのトルバは、さまざまな茶色が使われていて、味があります。



ほとんどのトルクメン絨毯は非対称結び(ペルシャ結び)で織られるのですが、ヨムートは対称結び(トルコ結び)のものも多く見られます。
これも対称結びですが、ものすごく細かい織りです。
下に出ている茶色の横糸を見てください。
強く撚りがかかっていて、指ではじくと「ぶるんっ」とはね返ります。



前回、「150年位のアンティーク」と書いたのですが、彼の説明書きを読み返してみると
First half 18th century(1700-1749)となっています。
ということは250年前のもの?? ひゃー!!
でも彼は欧米のトライバル・ラグ界ではかなりのオーソリティーで、
長年ラグを構造的に分析している人ですから、でたらめなことは言わないと思います。



パイルがかなり抜けていますが、縦糸と横糸のベース部分はしっかりと残っています。



裏はこんな感じ。実物はもっと美しいのですが。



この熟成された色を見てください。
とても弾力のあるウールで、なんとも味わいぶかい艶があります。



インディゴの濃淡。「きつくなくて奥深い」色。



マイケルのおじちゃんによる説明にはこう書かれています。
おじちゃんは説明文も超カッコイイ!

the most polychromatic Turkoman weaving that i have seen in many years.
Impossible to capture with photography.
Who says Kepse gul weaving aren't old? Lame thinking.

2012.03.04 Sunday

トルクメンの新刊本を読む―いわゆる「ベシール絨毯」について


Erena Tsareva“Turkmen carpet”より、「アムダリア中流―中央アジアのバビロン」の一部をご紹介します。

 「アムダリア川中流域に固有の絨毯は、北ユーラシアの織物芸術の歴史におけるユニークな現象である。その驚くべきあざやかさと多様性、そして斬新さは部族絨毯に興味を持たない人びとさえも魅了している。
 この地域の織物の伝統は、流域の“入植地化”と直接に結びついて発展してきた。アケメネス朝時代、中央アジア最大の大河の浅瀬に最初の入植がはじまって以来、その川をアーリア人はWakhsh、ギリシャ人はOxus、アラブ人はJeitunと呼んだ。シルクロードの交易や外交の隊商、遊牧民の移動、東へあるいは西へと進む種々の軍隊は必然的にこの川を渡らねばならなかった。最初に通過したのはアレキサンダー大王で、かれは前329年に自らの軍を率いてOxis川を渡った。“訪問者”のなかにはこの地域の初期入植者に加わって経済システムの発展に関与するものもあった――灌漑農業、家畜飼養、手仕事、そして絨毯を織り、取引することである。」

彼女によれば、アムダリア中流はシルクロードの中でもっとも種々多様な民族がゆきかう要衝のひとつであり、それがこの地域の毛織物のユニークさを形成した、というわけです。



この地図は"Between the Black Desert and the Red"という本からのものですが、トルクメニスタンとウズベキスタンの間にアムダリア川が流れています。堂々たる大河ですね。
トルクメン絨毯が交易されたBukharaを青で、アムダリア川中流を北部・中部・南部に三分割した中心地Chardjou(旧称はAmur), Burdalyk, Kerki(旧称はZemm)を赤で囲いました。

エレナ女史は、ホフマイヤー氏の実際のコレクションを見ても、アムダリア川中流の絨毯は、複数のトライバルグループと産地、および遊牧民ではないオアシスの都市住民によって織られた、と述べています。

では実際に、掲載されたホフマイヤー氏のコレクションを見ていきましょう。
以後、「南部」「中部」「北部」という表現はアムダリア中流域での区別です。


        (エルサリ 206×275cm 19世紀中頃)

エルサリはこの地域で最大の勢力で、17世紀から18世紀にかけて「南部」に移り住むようになり、農業のかたわら絨毯の製作をおこなっていたとのこと。
この絨毯は、トルクメンの部族絨毯らしく、「グリ・ギュル」メダリオンが並んでいるが、その間をうずめる「アヒルの足」モチーフや、「孔雀」のメイン・ボーターは、シティ・ラグ的な要素を持ち、ブハラやホラサン(現イラン)のバザールで人気があった「エルサリの商業的バリエーション」のピースではないか、というのです。


       (ミナ・ハニ・グループ 138×212cm 18世紀)

スキャナーの性能が悪くあまり鮮明ではありませんが、本の写真はとても美しいものです。実物はさぞすばらしいでしょうね〜!

「中部」には、この地域の古くからの住人のほか、アラブ人・ペルシャ人・ウズベク人・インド人など小さなトライバルグループが住み、そのほとんどが絨毯を織り、多種多様なパターン、スタイルと技法を生み出したといいます。
紫や深紅を使ったこの「ミナ・ハ二文様」の、構造的にも同じ絨毯が、絨毯だけでなく袋物にもみられることから、「単一の製作グループによって織られたのではないかということが示唆される」というのです。おそらく都市住民の一部のような気もしますが、織り手を確定するエビデンスがないため仮に"Mina Khani Group"としたのでしょう。

また、ブログには写真をアップしませんでしたが、「北部」に住んでいたと思われるサロールのマイナー・ギュルパターンの小さな絨毯(18世紀)が載っています。


       (「南部」のもの 160×310cm 19世紀前半)

さあ、これがベシールの中でも有名な「クラウド・バンド」デザインのもの。
エレナさんによれば、「古代のもっともトーテミックなモチーフのひとつは大蛇」で、「大蛇のイメージは青銅器時代のトルクメニスタンで好まれた」といいます。
深い青のベースは「水」を、間を埋める赤いドットは「繁殖」を象徴しているとのこと。
織ったのがどこの部族あるいはオアシス住民かについて、彼女は言及していません。

いわゆる「ベシール」の呼称についてこの本では「この呼称は商業から生まれたものであり、19世紀にブハラの商人が、トルクメン絨毯のすべてとアムダリア中流の絨毯を“ブハラ”と名づけたことを連想させる」と書かれています。
V.G.Moshkova氏とエレナさんがそれぞれ独自におこなった調査でも、「ベシールはごく平凡な村であり、Burdalykや他の中部地域の製作地の競争相手ではありえない」ということです。
つまり「ブハラ」も「ベシール」も、「絨毯のブランド化」のツールとして使われた言葉にすぎないのかもしれませんね。


   (ウズベクか? 「南部」 178×312cm 19世紀)

これは都市の家庭で使われるために織られた絨毯で、イカット・パターンの影響を受け、単純化された「カメ」のイメージだといいます。


(エルサリ「南部」132×152cm 放射性炭素年代1633-1706が30.7%、1714-1820が47.1%)
  
これは「エンシ」と呼ばれるテントのドアの役目をする絨毯ですが、一般的なエンシより短めです。



上は「トルバ」と呼ばれるテントバッグ、中と下は「アスマリク」と呼ばれるラクダの飾り。
織ったのは、上がキジル・アヤク、中がエルサリ、下は不明。「キジル・アヤク」はエルサリの小支族とされています。
これらはいわゆる遊牧のテント生活で使われる「トライバル・アイテム」なのですが、それらの一部は
「プロフェッショナルな都市住民が、ウールやその他遊牧産品と引き換えに、遊牧民のために織ったもの」というのです。
エレナさんの主張が正しいとすれば、衝撃の事実!


(上はキジル・アヤク「南部」126×97cm19世紀初頭、下はエルサリ「南部」125×87cm19世紀以前)
この二つは大きなテントバッグであるチュバルです。キジル・アヤクはとても良い絨毯を織ると聞きます。エルサリのピースも、繊細で優美な印象を受けますね。
「部族がこの地域に住んで長くなるほど、この地方の色合いが濃密になってくる」とエレナさんは言います。
つまり厳しい環境にいる場合と、アムダリアのような豊かなオアシスにいる場合と、おなじ部族でも織られる絨毯が違ってくる、ということなのでしょうね。



先のキジル・アヤクとエルサリのキャプションは「チュバル」だったのですが、この二つのキャプションは「チュバルタイプのラグ」となっています。
何か根拠があるからこそこう表記したのでしょうが、本文にはその説明がありません。
ただ一見してわかるのは、過剰なほどの装飾性です。
遊牧生活でのチュバルは、お嫁入り道具として力を込めてつくられるのが一般的ですが、これほど華美なものは本でもあまり見かけません。

それでも、さらに驚くべきなのは、これほど装飾過多でありながら、まったく嫌味がなく、きわめて洗練された美意識に貫かれていることです。

            ***
アムダリア川中流域は、交通が発達し、温暖な気候と塩分を含まない豊富な水に恵まれた地域です。
さまざまな人々が行き交い、豊かな文化が育まれた「中央アジアのバビロン」に生まれた、うつくしい絨毯の数々。
行ったこともない地に、ロマンをかきたてられます。

2012.02.26 Sunday

ベシール フラグメント


「ベシール」といっても「何それ?」と思う人が多いと思います。

ベシール絨毯とは、かつてアムダリア川中流域で織られた絨毯のタイプで、
テント内で使われたと思われるピースもあれば、かなり大きい縦長のカーペットもあって、
後者は売るために織られたシティ・ラグではないかと言われています。

ベシール絨毯の一部がトルクメンのエルサリ・グループによって織られたというのは定説のようですが、
「エルサリだけではないだろう」「他の部族やオアシスの住民も織ったのではないか」等
いまだ解明されておらず、あいまいな部分がかなり残っているようです。

エルサリという支族自体、17世紀にカスピ海沿岸を離れてアムダリア川中流に遷り
シルクロードを経て伝播したインドネシア等の文様の影響を受けるなど
他のトルクメンの支族とはかなり異質なものを持つと言われています。

以前にご紹介したベシールのチュバルは、イカット文様の影響を受けたもの。



他のトルクメンの支族の絨毯にくらべて大らかな印象で、
また黄色と緑色が使われることが多いために華やかな感じ。

トルクメンの新刊本の目次には「エルサリ」の項目がなく、「アムダリア中流」がいわゆるベシール絨毯と呼ばれているものの説明になっています。



いま勉強中なので、今日はとりあえずわたしが持っているフラグメントをご紹介しましょう。



ニャーゴ! ニャーゴ!
"cat's head Beshir"と呼ぶ人もいます。
もちろん正式名称ではありませんが、こういう名前をつけると楽しくなりますね。



この色の鮮やかさがベシールの魅力。



日光の下ではこんな感じです。



経糸は山羊の毛です。
古いベシール絨毯の経糸は茶色のことが多く、羊の毛、山羊の毛の二種類があります。
山羊の毛は羊の毛よりも硬く丈夫なので、
ベシール絨毯はデプレスはありませんが、丈夫なものが多いようです。



エルサリの絨毯は他のトルクメン支族の織目に比べて大きい。
このベシール絨毯はエルサリが織ったものかどうかわかりませんが、織目は大きめです。



まん中のネコは「ニコちゃん」、左上のネコは「困ったちゃん」?



鮮烈な赤! 緑もいいわ〜!



ボーダーの文様はチャップリンのダブダブズボンのようにも見えますが、
もとはどんな意味があったのでしょう?



次は頭にテコ入れて頑張りま〜す!

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