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2012.08.03 Friday

昆虫染料 実物の色を比較してみました

(以下の記事は写真の取り違えがあったため訂正し、若干の補足もしました)

暑中お見舞い申し上げます。

コチニールを中心としたの比較をしてみました。
サンプルに使ったのは、これまでにご紹介したキリムです。まず、キリムに番号をつけます。


1番 大きなシャルキョイのフラグメント


2番 ちいさなシャルキョイ


3番 マナストゥルとも呼ばれるシャルキョイのフラグメント


4番 レイハンルのランナー


5番 シヴァスのギョルンと呼ばれるデザイン


6番 マラティア?あたりのフラグメント


7番 ガジアンテップあたりのランナー


8番 クルドのものと思われる東アナトリアのキリム。
マゼンタの部分がコチニールにしては色が弱く、
もしかしたらアララット・ケルメスではないかと疑っているもので、個人的には今回の焦点。

ヘラルド・ボーマー氏のもうひとつの著書"Nomads in Anatolia" によると、
「東アナトリアのクルドのキリムにはよくコチニールが見られるが、
その色が薄い場合には、アララットケルメスである可能性を否定できない」
とあるのです。
ただし両者は肉眼では判別できないし、化学分析による判別も現時点では不可能とのこと。
要するに、「これって、アララットケルメスかもしれないよね〜」という想像にとどまるのですが、
色を比較したりするのもいいかな、と思い、試してみました。

* * *


8番の昆虫染料の部分。よく見るとピンクの糸の表面に白っぽい部分がみられます。


左が1番のシャルキョイ。右が8番。


左は2番のシャルキョイ。右は1番。かなり近い色です。


やはり2番と1番。写真によって若干色のニュアンスが変わります。


左は2番。右は8番。左上方にわずかに見えるのが1番。





左は3番マナストゥル。右は1番。織りは右の方がずっと細かいですね。
肉眼で見ると、3番の方がやや暖色系の赤で、1番はクールな赤
写真とパソコンのモニターを通すと、色の違いがほとんどわかりません。
「コチニール・レッド」というのは、やや青みを帯びたクールな赤だと言われています。
今回わたしは、1番をコチニールの代表色として選んでいます。


左が3番、右が8番。




左は4番レイハンル。右は1番。
この2枚はほとんど同じ色に見えますが、肉眼だとレイハンルのコチニールの方が若干濃いようです。


左が4番、右が8番。


ちなみにこれは4番レイハンルに使われている紫。
写真で見ると化学染料みたいに見えますが、肉眼では奥行きのある天然染料です。
ボーマー氏の本では、「レイハンルの紫はコチニールとインディゴでつくられる」とあります。


これはボーマー氏KOEKBOYAからの資料、19世紀かそれ以前の中央アナトリアのキリムです。
このやわらかな感じの紫は「茜を鉄の媒染剤で染めたもの」とあります。
上のレイハンルのハッキリした紫とはちがう色ですね。


5番はシヴァスあたりのものですが、レイハンルの紫にちかい色が使われています。
左が4番、右が5番のギョルン・デザインのもの。


おなじく左4番・右5番。
カラーパレットがよく似ているので、かなり近い時代に近い場所で織られたのかもしれません。




左が1番シャルキョイ、右が5番。5番の方がコチニールが濃いようです。


左が5番、右が7番。




左は6番マラティア、右は1番。マラティアの方が濃いですね。
スミマセン、6番と8番の比較写真を撮るのを忘れてしまったようです……


左は1番、右は7番のガジアンテップ。
このピンクはもしかしたら昆虫染料ではなく、植物由来かもしれません。やさしい感じのピンクです。


左が7番。右が8番。
8番は1番から6番までの色と比べると、あきらかに「薄い・弱い」色なのですが、
7番とはかなり近い色に見えますね。
ただし肉眼で見ると、わたしの印象では、両者は違う染料を使っているように思えます。
6番は糸の内部まで色が浸透しているのに対して、7番は「糸の内部まで浸透しきっていない」印象です。
アララット・ケルメスは約半分が脂肪のために染めにくい染料だと聞いています。
脂肪分が染料の浸透を妨げているのでしょうか。

素人の領域を出ないのですが、8番のクルド族の昆虫染料っぽいピンクは、
やはりアララット・ケルメスのような気がする(あくまでも主観ですが)というのが今回の結論でした。

(さらにつづく)

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