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2013.07.05 Friday

ウールの質を決めるもの


毛織物にとって湿気はあまりよくありません。
「早く梅雨が明けないかな〜」と、除湿機をかけたりしてしのいでいますが、
湿度が高いと「毛織物の臭いが気になる」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

もちろん天然素材には特有の臭いがあり、有機質であるウールがある程度臭うのは当然のことです。
わたし自身はウールの臭いが嫌いではないし、「こりゃたまらん」というほどの臭いの経験もないのですが、
何人かの方の体験談をお聞きして、「特に臭いが強いウールがあるのかもしれない」と思っています。
「絨毯をクリーニングしても臭いが取れない」ケースもあるようなので、
それはウールの外側が汚れているのではなく、内部に染みこんだ臭いなのかもしれません。

あるいはまた、このブログを見てくださった方の検索キーワードを見ると、
「手織り絨毯 くさい」というものの他に、「ギャッベ安物」とか「毛が飛ぶ」といったものがありました。

これまで数多くの絨毯やキリムに出会ってきましたが、
なかにはあまりウールの質がよくないものもありました。
「毛が飛ぶ」というのは、無駄毛のことだと思います。
新しく織られた絨毯の場合、多かれ少なかれ無駄毛は出ますが、
たくさん無駄毛が出る絨毯というのは、ウールの質があまり良くないことも考えられるでしょう。

絨毯を選ぶ場合の大切なポイントのひとつは、「よいウール」が使われていることだと思います。
よいウールには、艶と弾力があり、染料がしっかり染みこんでいて、少し重めです。
絨毯やキリムにした場合、広げるとき、床に吸いつくようにスルスルと伸びます。

* * *

先日はじめて絨毯織りのおけいこをして、「絨毯はどのようにつくられるのか」と、
あらためて本を読んでいますが、本当に絨毯の世界は奥が深いです!

wool  hair  kemp

まず、わたしは「wool =羊毛」、「羊毛=wool 」と思っていたのですが、
「wool」には羊だけでなく、山羊・ラマ・アルパカなどの毛も含まれているようです。

また羊毛は、wool , hair , kemp の三つのランクに分けられ、
比較的細くて長い繊維のものがwool 、
それより繊維が太く硬めなものがhair 、
kemp はさらに繊維がもろくて艶がなく、染料に浸しても浸透しないもの、
ということで、絨毯織りにいちばん適している毛はwool 、ということになります。 

< wool の質を決めるもの .劵張犬亮鑪爐畔牧地の地理的条件、草・水などの環境 >

これはよく言われることですが、メリノ種など「良いウール」がとれるヒツジの種類。
ふんだんな牧草ときれいな水がある放牧地。
そして一般に、寒い地方の羊の方が暑い地方の羊に比べてラノリンが多く、
よいウールが取れるとされています。

< wool の質を決めるもの ◆峇△蟾む季節」 >

ひとくちにwool と呼ばれるものでもピンからキリまであって、
毛を刈り込む時期も重要です。
一般に、春に刈り込まれる毛が上質で絨毯に向くとされ、秋に刈り込まれる毛はフェルトの材料などに使われます。
また、刈り込みは一年に一回、春だけしか行わないグループもあります。

一頭の羊でも、特に上質なのは首から肩にかけての毛で、お尻の毛は質が落ちます。

Scan10008 - コピー.JPG

『絨毯 シルクロードの華』(朝日新聞社)より
コーカサス・ダゲスタン地方でのヒツジの毛刈り

< wool の質を決めるもの 洗いの作業 > 

「剪り取った原毛は、石けんやソーダを使って繰り返し水で洗って染着性を弱める余分の脂肪(ラノリン)や
付着している土砂や汚物などの狭雑物を取り除く。これを天日で乾燥させてから選別する」
(上掲本 pp.101-102)

洗いの作業は、毛を刈り込む前に羊そのものを洗う場合もあるようですが、
きれいな水が少ない環境などでは、この洗いの作業がおろそかになる場合もあるでしょう。
もしかするとこの「洗いの工程」が、ウールの臭いに関係するケースもあるのではないかという気がします。
ただしそれを裏付けるデーターを持っていませんので、個人的憶測の域を出ないことをご承知置きください。

< wool の質を決めるもの ぁ嵳嗅咾料別」 >

Scan10008.JPG

上掲本より トルコの村での選別作業

羊毛を洗った後は、選別作業です。
上のように、繊維の細さ・長さ・硬さなどにより分けていきます。
この作業で、「特に良いもの」を厳選するのか、それとも「中位のものも入れちゃえ」にするのか、
選別の基準をどこに置くかで、絨毯に使われるウールのランクが変わってきます。

< wool の質を決めるもの ァ巍爐作業」 >

手作業で行う場合の代表的な「梳き機」は二種類ありますが、それぞれ用途が違うようです。
日本では一般的に「カーディング」と呼ばれ、毛を梳く作業に違いはないと考えられている節があります。
かくいう私もこのことを知ったのは今回が初めて。



"KILIM  the complete guide" by Alastair Hull ほか より
チュニジアのカーディング作業。
使っているのは "Wool cards" と呼ばれる道具。
ふたつの梳き機を逆方向にこすらせて毛を梳いています。

Scan10009 - コピー.JPG

『絨毯 シルクロードの華』より ダゲスタン・アヴァールの少女がウールを梳いているところ
使っている道具は "Comb" と呼ばれるタイプ。毛を一方方向へ梳きます。
こちらの梳き機が、本来、絨毯のウールには理想的なタイプのようです。

Scan10005.JPG
"Woven Structures" by Marla Mallett より

"Wool cards"と"Comb"、それぞれのイラスト。
それぞれの道具を使った結果、ウールの繊維はどうなるかというと……

Scan10006.JPG

"Oriental rug repair" by Peter F. Stone より

このように、繊維の並び方が異なったものになるわけです。
上は繊維をあえてこんがらせ、下は繊維をできるだけ平行にさせています。

Marla Mallett女史によると、
上は、ふわっとした軽い糸になり、毛布や衣類に適し
下は、コシと艶がある重目の糸になり、絨毯に適している、ということです。

カーディングは現在機械化され、均質で紡ぎやすい糸(woolen)ができるものの、
下の worsted の糸に比べると滑らかさに欠け、パサついた感じがするとのこと。

Peter Stone氏は、繊維の長さについても述べています。
一部のウールは(紡ぐ前の)繊維が50cmを超える長いものもある。
長繊維のものは首や肩の毛で、短繊維のものは尻のあたりの毛だ。
長繊維のウールは、繊維が平行になるように梳くと、より強く、より艶が出て、より柔軟性のある糸になる。

* * *

遊び毛が多く出る絨毯というのは、原料のウールの繊維が短めなことや
毛を梳く作業工程にも関係しているような気がします。

このように、ウールの質は、さまざまな要素によって決まります。
「絨毯に使われる良いウール」といっても、日本ではあまりそのようなセールストークは聞きません。
何枚もの絨毯を見て、さわって、使ってみないと分からないものかもしれませんが、
はじめて絨毯を購入される方は、販売者に「ウールの質はいいですか?」と確認することをお勧めします。




コメント
こんばんは、話外れるかもしれませんが、私はマトンが臭くて食べられませんが、ラムなら食べられます。洋犬でも体臭の強い犬がいます、食べ物、種類によって体臭が強い物が要るのでは!?
絨毯に限らず、どの様な物でも素材が良くないと良い物は作れませんね。
 
暑くなりました、御身体にお気を付け下さい。
  失礼致します。

      美幸



  • M Ikeuchi
  • 2013.07.05 Friday 20:21
コメントありがとうございます。
やっぱりどんなものでも素材は大切ですよね。色や柄がステキな服でも素材がよくないと駄目ですし、家具など長く使う物は特に材質にはこだわりたいです。
ノット数やブランド産地の話も大切だと思いますが、日本の絨毯屋さんには、素材についてもっと顧客にアピールしてほしいなと思います。
今日、明日と暑くなるようですね。どうぞお身体ご自愛ください。
  • ぷぎー
  • 2013.07.06 Saturday 07:30
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