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2014.03.08 Saturday

そして絨毯が残された――コーカサス・クバ 絨毯

マス・プロダクトの絨毯の話は勉強にはなったけれど、なんだか心がカサカサになりました。
和田泰志著『アンティーク・カップ&ソウサー』(講談社2006年)に興味深いことばが書かれています。

「18世紀の昔よりも19世紀や20世紀のほうが、蒸気機関、石炭、電力など、技術的な進歩が著しい。
しかしながら磁器製品の品質は、時代を追って明らかに低下傾向にある。
読者の中には、近・現代では工業的に恵まれた環境にあるのに、なぜ逆に良い品物が減るのだろう、という疑問をお持ちの方があろう。
けれどもこれは『逆に』ではなく、技術が進歩したからこそ、磁器作品の質が悪くなったのであり、
窯業の科学的・工業的発展と工場設備の近代化が、磁器から芸術性を奪ってしまったとも言えるのである」

* * *

磁器だけでなく、絨毯に関しても同じことが言えるのかもしれません。
「実用品」として考えれば、良質な絨毯はいまもたくさん織られているでしょう。
でも最近のもので、織った人の気持ちが伝わってくるような絨毯はほとんど見かけない気がします。

「芸術性」とまで言えるかどうかはともかく、絨毯のなかには「アート」を感じさせるものがあります。
今回はひさびさに "My Favorite Rug" をご紹介しましょう。

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コーカサスのクバ地方の絨毯と聞きました。約153cm×110cm。
コーカサス絨毯は日本ではほとんど見かけませんが、欧米では高い評価を受けています。
このデザインは、手持ちの絨毯本に似たものが見つからないので、個人の創作の部分が大きいのでしょうか?

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どことなくユーモラスなモチーフが活き活きとして「絵心」を感じさせます。
フィールドのいちばん下の部分は、トラかヒョウが行進しているように見えるし
その上に3つ並んでいるモチーフはダンス中。その周辺にも面白い模様がちりばめられ、
わたしは勝手に「アフリカのお祭り」という名前をつけています。

幾重にも重なるボーダーの織りがキリッとしていて、とても上手な人が織ったことがわかります。

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オレンジがかった桃色(ローズレッドではない)、黄土色、グレーなど、あまり見かけない色ですが天然染料だと思います。
古い絨毯やキリムの天然染料は、茜・インディゴ・コチニールなどいくつか「典型的な色」があるのですが、
100年以上前には、それらとは別の、地域独特のレシピがあったのではないかと推測しています。
前回のトルコ・クラの絨毯に使われている色も独特でした。
この絨毯もクバ地方の村の女性が織ったものだと思いますが、プロの染色職人ではなく自分たちで染めたのかもしれませんね。
ちなみに田村うららさんの本によると、ボザラン絨毯の「グレー」は草木で染めた後、泥につけて染めるようです。
泥染めは日本の大島紬でも有名ですが、絨毯の本で泥染めの記述を見たことがなく、目からウロコでした。

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あまり写真がよくありませんが、色糸を何度も切り替えて個性を出しています。
これを織った人はとてもアートセンスがあると思いませんか?
工房や工場で織られる絨毯には、独創性が入りこむ余地はありません。
プロのデザイナーが意匠や配色を考えるので、間違いはない一方、こういった個人の才能を活かすことはできません。

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経糸は染めていないウールで、多くのコーカサス絨毯に特徴的な「3本撚り」。(一般的には「2本撚り」)
まん中あたりにちょろっと出ている横糸は、茶色とオフホワイトのウールの2本撚りです。

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絨毯の裏側。地味な色が多いけれど、落ちつきがあって見飽きない絨毯です。

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左に見えているセルベッジ(端)は傷んでいたのでしょう、後から巻かれたものです。
ボーダーの文様はコーカサス絨毯に典型的なものですが、フィールド部分がなんといってもユニーク。

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寝室の壁にかけています。
眠るとき、目が覚めたとき、この絨毯が目に入ると、とても気持ちが落ち着きます。
 
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