ARCHIVE  ENTRY  COMMENT  TRACKBACK  CATEGORY  RECOMMEND  LINK  PROFILE  OTHERS
<< March 2024 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< コーカサス チェック?のヴェルネ(前編)  | main | 番外編 Help! >>
2010.12.06 Monday

コーカサス チェック?のヴェルネ(後編)

 今回はこのジジムを見ていて、気がついたことを取り上げます。
このピースの大半は、とても上手なひとが織ったのではないかと思いますが……



右端の「羊の角」、ちょっと歪んでいませんか?



ありゃりゃ、この菱形はどうしたことでしょう?
裏側に現れているジジムの始末も、つたない感じですが……



左右のボーダーのジジムは、たどたどしい菱形がほとんど……

* * *

さて、ここから先は推測になりますが、
どうもこのピースは、上手な織り手さん以外に「初心者」が加わっているのではないでしょうか?
地の部分とフリンジ付近のジジムは、上手なひとが織って、
「初心者」が左右ボーダーのひょろひょろジジムを手がけたのでは……



"TRIBAL RUGS" by Jenny Housego 1996より
シャーセバンの女性がジャジムを織っている写真
(お母さんたちはガイジンさんに慣れたようすなのに、子どもたちは「不審」のまなざし!)

以前からなんとなく気になっていたのですが、
遊牧民の写真には、上のように小さな女の子がよく一緒に写っているんです。


"Carpet Magic"  by Jon Thompson 1983 より
トルクメンの女の子がおもちゃの織り機で絨毯を織っています

遊牧民の女の子は、ものごころがつくや、ごく自然に織物にかかわっていくそうです。
いつもすぐそばでお母さんがキリムや絨毯を織るのを眺めているうちに、
自分も織ってみたくなるのかもしれません。

"ORIENTAL RUGS IN COLOUR" by Preben Liebetrau (1963) という本に、
つぎのように書いてありました。

遊牧民のラグはすべて女性によって織られ、子どもたちを手伝わせることもしばしばある。
女性が
両脇の二人の子どもたちと一緒に仕事をしているのは、ごく普通のことだ。
これによって彼女らは絨毯製作の秘訣と要領とを、遊びの感覚で習得するのである。


"KILIM The Complete Guide" by A.Hull & J.L.Wyhowska
アフガニスタンのハザラ族の女性と子どもたち

両脇に女の子のいる写真を見つけました!

なにを手伝うのかといえば、
糸の色を変えるときに、「赤取って」とか「青取って」と指示したり、
「(織り目を詰める)タラク取って」とか「(パイルをカットする)ナイフ取って」とか
使う道具を手渡しするのが、まず手始めかな〜、なんて考えちゃいます。

お母さんはキリムや絨毯織りの作業を見せたり説明したりしながら、
つぎの世代に手仕事を継承していったのではないでしょうか。
そしてそれが、母と娘のコミュニケーションでもあったという……

子どもたちにしてみれば、
単なる毛糸が一枚のうつくしい織物へと姿を変えるのを驚きの目で眺めつつ、
いつかは自分が糸を操って、作品をつくりあげたいと願ったのかもしれません。

これって、ものごとをロマンチックに考えすぎでしょうか?
でも、もし、単に必要だからというだけでなら、
あれほどたくさんの美しいキリムや絨毯が生まれるはずはなかったと思います。

ひとがものをつくるということには、
きっとよろこびが伴っていたはず。

コーカサスのベルネのジジムを眺めながら、
そんなことを考えました。

コメント
 夏休みで時間があり、ぷぎーさまのブログを最初から読ませて頂いています。本当に読み応えのあるブログです。いつも大変、勉強させて頂いております。

 ウズベキスタンのバザールで聞いた話なのですが、こちらのスザニという刺繍布はよく未完成のものがあります。なぜ未完成なのかと聞くとあとは子孫が続けて作るように、仕事をやり残しておくことが子孫繁栄につながると聞きました手仕事は親から子へ受け継ぐものなんですね。

 私は以前、モンゴルに居たときにカザフ族の刺繍布アラフチにも同じことを聞いています。私は未完成だから安くして!と交渉しましたところ説明をそのような受けました。それで絨毯なのですが私が購入した絨毯は最初と最後の模様と色が違います。糸が足りなくなったのか、手を抜いたのかと思いましたが、なるほどもしかして若い娘が練習したのかと、こちらのブログを読むことで納得しました。
 刺繍も好きなのですが、最近では大きくて良いものは絨毯の新品と同じくらいの値段がします。それなら絨毯の方が長く使えるかと思います。ただ、持って帰ることを考えると大変ですが・・・。

 ちなみに私の周りにはアゼルバイジャン人、イラン人。アルメニア人、タタール人、アフガン人がいます。タシケントは本当にいろんな国の人々が居て、それぞれの文化を持って生活しています。平和でよいところですよ!

 そして絨毯屋はトルクメン人!親戚から輸入しているらしいです。また彼女自身も絨毯を織っています。
 私にはトルクメニスタン在住の貴重な日本人の知り合いがいます。彼に絨毯を市場調査してもらっていますが、トルクメニスタンではアンティーク持ち出しが制限されていて、現代のものばかりです。白や青や緑など美しいですが今のところすごく買いたい衝動にはかかれません。しかしウズベキスタンよりやはり安いようです。オールドに関しては彼からの情報がありません。アンティークは好きな人でないとなかなか難しいと思います。やはり自分が行ってみなければ!と思っていますが、トルクメニスタンは「中央アジアの北朝鮮」と言われてなかなか難しいです。かえってここウズベキスタンの方が見つけやすいのではないかとも思います。
 またこの夏、カザフスタンのアルマティに行った友人がやはりアンティーク絨毯が売られている写真を送ってくれました。野ざらしで販売していました。こちらでも古い方が外国人が喜ぶので、わざと陽に当てて古ぼけさせているところを見ましたが。機会がありましたらぜひおいでください。
 いつも長々と失礼しました。
  • ライホン
  • 2019.08.17 Saturday 15:08
わたしのコンプレックスの一つ目は、絨毯が織られる現地に行っていないことですが、ライホンさまのコメントでいろいろ想像をふくらませています。

アゼルバイジャン人、イラン人、アルメニア人、タタール人、アフガン人、、、さまざまな民族が、それぞれ文化を持って、平和に生活しているというお話、とっても心に沁みます。いま日本は隣国とどういう関係で、国内で違う意見を持つ人と人との関係はどうなのか、、、絨毯とは関係ないですが、そんなことを考えてしまいました。

お話を聞くと、中央アジアではまだまだ「親から子へ受け継ぐ手仕事」が残っているようですね。
ご購入の絨毯が最初と最後の模様と色が違うとのこと、興味深いです。たぶんその絨毯は売るために織られたのではなく、自分たちのために織られたのでしょう。
タイマニ族やクルド族で「合作?」みたいな絨毯を見たことがありますが、トルクメンは几帳面なイメージがあって「きちんとした絨毯じゃないと許さん!」感じがするのですが、そういう意味でもライホンさまの絨毯は貴重ですね!

トルクメニスタン、出入国難しそうですね。この前、トルクメニスタン在住の方らしきブログを発見しました。現在のトルクメン絨毯の感じ、大変参考になりました。
https://ameblo.jp/jyorogumo/entry-12376789535.html

ぜひまたウズベキスタンはじめ、現地の情報を教えてください。
  • ぷぎー
  • 2019.08.17 Saturday 20:12
コメントする








 
この記事のトラックバックURL
トラックバック
Powered by
30days Album