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2016.05.07 Saturday

ヘラティ文様について 1


ところで私がはじめて「ヘラティ文様」という言葉を知ったのは、
『キリムのある素敵な暮らし』(主婦の友社 2002)というムックだったと思います。

IMG_2995.JPG
絨毯の産地としても有名なセネで織られたキリム。
地織りに、セネ特有の花柄のヘラティ文様と、大きなメダリオンが描かれています。
かたくしっかりした現地産の羊毛が使われています。(p.90)

キリムにはいろいろな文様が見られます。
乾燥した高原に住むイランやアフガニスタンの農民や遊牧民にとって、花の咲く庭園はイスラムの楽園なのです。
また、花を中心にして葉をあしらった文様ヘラティと呼ばれています。(p.102)

「花を中心にして葉をあしらった」という箇所をきちんと読めば誤解はなかったのでしょうが、
セネキリムが醸し出す独特の印象が強烈だったため、私は
「なんだかグニャグニャしてつぶれたようなデザインがヘラティ文様なのか〜」と大いなるカン違いをしていました。Docomo_kao8

グニャグニャしているのはセネキリムやシャルキョイキリムに見られるカーブ織りのテクニックのためであり、
つぶれたように見えるのは、セネ特有の細い糸の緻密な織りだからであって、
「ヘラティ文様とはどんなデザインか」がわかったのは、それからしばらく後でした。テヘ。

IMG_2997.jpg

こちらは『絨毯 シルクロードの花』(朝日新聞社 1994)から。

IMG_2998.jpg

上のイラストは「菱形」とは違う気もしますが、ヘラティ文様のイメージはずいぶん明確になりました。

ヘラティ文様のルーツが、現アフガニスタンのヘラートにあること、
4枚の細長い葉を基本にして、そのまわりが花で飾られていること、
そして「マーヒー(魚)文様」とも呼ばれていること‥‥フムフム。

* * *

セネ・キリムは織りが独特なので、初心者がこれを見てヘラティ文様を理解するのは難しいような気がします。
絨毯ならもっと明確にわかるでしょう。
そこで白鶴美術館所蔵品目録『中近東の絨毯』1995 から、二枚のセネ絨毯を。

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中央にメダリオンが配されたタイプ。

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IMG_3013.JPG

フィールド部分に同じモチーフが繰り返される、オールオーバー・パターン。

* * *

ところで、「ヘラティ文様の起源がアフガニスタン西部の町ヘラートにある」という上記文章を読んで、
「ヘラティ文様はペルシャ絨毯によく使われる文様なのに、起源はアフガニスタンなの?」と
どうも腑に落ちない気がしました。

でも、特に大陸では「国境」が時代の変遷につれて変わるのは当たり前、
ヘラートもギリシア人、アラブ人、モンゴル族、ウズベク族の支配下に置かれたのち、
1501年、サファビー朝イスマーイール一世によって占領されたのです。



ウイキペディアより引用。サファビー帝国の北東にHeratが位置しています。

サファビー朝のもと、ペルシャ絨毯がデザイン・染色・織りの技術を飛躍的に発展させたことはよく知られていますが、
16〜17世紀にかけ、ヘラートはホラサーン地域の中核都市として機能しました。

IMG_2991.jpg

もし私が「絨毯の本で一冊だけ推薦するとしたら?」と訊かれたら、まずはこの本をお勧めします。
もちろんトライバル・ラグなど何かに特化した良い本なら他にもたくさんありますが、
絨毯の基本を知りたい場合、まんべんなく解説されており、写真も比較的鮮明で、
なによりも「どういう絨毯が良い絨毯か」という点で、非常に参考になると思います。

おっと、横道にそれました。

この本によると、ホラサーン地方は、15世紀のティムール朝の時代から細密画や絨毯製作を発展させてきたが、
ペルシャ絨毯がヨーロッパに輸出されるようになった最初期には、
紺色のベースにヘラティ文様が織られた細長い絨毯が盛んに織られて輸出されていった、とのことです。
また、現存するサファビー朝の絨毯も、当時のヘラートとの関連性を指摘する声も多いとか。

* * *

ということで、ヘラティ文様がヘラートの町自体で生まれたというよりは、
当時のホラサーン地方で織られた多くの絨毯にヘラティ文様が使われており、
それらの絨毯の集散地として機能したヘラートの名前を冠するようになった、と考えるのが妥当なようです。

(つづく)
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