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2016.05.16 Monday

ヘラティ文様について 3


前々回オススメした絨毯本 "ORIENTAL CARPETS" は、小さいながらも写真や地図が多いので、
英語に苦手意識を持たれる方も、眺めるだけで十分楽しめる本です。

でも「産地や年代の推定など、どう判断すればいいの?」といったアナリシスに興味を持たれ、
英文でも読んでみようという方には、この本がオススメ!

IMG_3075.JPG

こちらはもともとドイツ人のHubel 氏が​1964年に出版した本ですが、
Washington International Associates が翻訳して、71年にアメリカでも出版されました。

「続 アートとしての絨毯とは?」という記事でアメリカ人コレクターが薦めていたのを、
ネットでググって買ってみたら、これが当たり! (絨毯でも本でも当たりハズレがありますゆう★

絨毯産地の歴史から、絨毯の織り構造、文様やデザインについて、
深い知見に基づきながら、ビギナーにもわかりやすく解説。

この本の著者も、ヘラティ文様は「大振りの連花葉文」から出発して、
17世紀中に小ぶりな「菱形」へと次第に変化し、
ヘラート周辺からペルシア西部や北部へと広がっていった、と解説しています。



ここにあるように、「ヘラティ文様」は「ファラハン・パターン」とも呼ばれています。
現在では「ヘラティ文様の絨毯といえばセネ!」と連想されますが、
菱形化したヘラティ文様の絨毯で最初に名声を博したのは、ファラハンだったようです。

ペルシャ絨毯に詳しい人でなければ「ファラハン絨毯なんて聞いたことない〜」というのが普通でしょうが、
それもそのはず、遅くとも1930年前後からファラハン絨毯は製作されなくなり、市場にほとんど出てこないからなのです。
その点、セネではずっとヘラティ文様の絨毯が織られてきたため、数の多さではダントツなんですね。

* * *

"ORIENTAL CARPET DESIGN"から、赤い✖️印がファラハン平原。
ファラハン絨毯はこの辺りで織られたようです。

IMG_2999.jpg

「ファラハン絨毯」は、1875年前後から19世紀末ごろまで欧米に輸出され、
エレガントで抑制の効いた色とデザイン、良質のウールや耐久性が人気を呼んだ、と言われています。



特にイギリスでもてはやされたようで、左はケントにあるHever Castle のエントランスホール。
左は「ケッレ(大型の長いサイズ)」ですが、右は195 ✖️ 122cmと小ぶりなファラハン絨毯。

* * *

このように欧米で有名らしいファラハン絨毯ですが、何冊かの絨毯本を読むと、
「どうもハッキリしない部分のある絨毯だな〜」という印象なのです。

ペルシア絨毯に全然詳しくない私が、ブログにまちがった情報を書くのはイヤなのですが、
ファラハン絨毯には大きく分けて二つのタイプがあるようです。
(まちがいに気がつかれた方はどうぞご指摘ください)

タイプ1
小ぶり(2✖️1.4m前後)で、非常に薄く、ボーダーに薄緑が使われている。
19世紀末にはすでにレアで高価、擦り減りが激しいものが多かったが
それでも当時のコレクターが蒐集の対象としていた。

タイプ2
デプレスの効いた織りで耐久性がある。大きなサイズも多い。ボーダーに薄緑は使われていない。
このタイプは「ファラハン・サルーク」とも呼ばれている。
また、デプレスのない織りで、タイプ1とも違う「マライエール・ファラハン」と呼ばれるものもある。

オタクな私としては「タイプ1」に興味がありますね〜。
「擦り減りが激しいのに、高額でも買おうとする人がいるって、どんな絨毯やねん?」ってカンジで。moe

IMG_3003.jpg

タイプ1について詳しく書かれているのはこの本。1962年発行。

IMG_3001.JPG
IMG_3002.jpg

残念ながらモノクロ写真ですが、ボーダーに薄緑が使われているとのことです。

ところがこの薄緑の糸は、擦り減りが一番激しいとのこと。
バルーチ絨毯など「鉄の媒染剤を使った茶色は繊維が朽ちやすい」のは知っていましたが、
薄緑で繊維が朽ちやすいというのははじめて知りました。

一般に緑色は、「インディゴと黄色の染料による二度染め」か、
トルコなどに見られる「植物からの直接染め」のどちらかだと言われています。
どちらも繊維が朽ちるという現象はありません。

「朽ちる緑色って、どんな染料?」とギモンに思っていたら、
上の "The Book of Carpets" に載っているじゃありませんか〜!
isperek (飛燕草)を硫酸銅の媒染剤で染めたもの、だそうです。

まあ、こういう内容が載っていることもあって、この本のファンになった次第です、ハイ。

* * *

さて、タイプ1のファラハン絨毯に出会うことは、今後もまずないと思いますが、
ヘラティ文様を使ったセネ絨毯のアンティークなら、美術館などで出会える可能性はあるかもしれません。

IMG_3076.jpg

これぞ第1級のヘラティ文様の絨毯〜! 19世紀のセネのものです。



上の絨毯はこの本からのものです。
写真が大きく鮮明なので、英語が苦手だという人でも十分楽しめると思います〜。
北アメリカ、インド、チベット、中国、ヨーロッパ産の絨毯も載っていますよ。

しつこいけれど、ヘラティ文様について、まだつづけます〜! あ
 
コメント
昨日東洋文庫でペルシア絨緞の勉強会でT女史と合い、ブギーさんの話題になりました。このところPC不調でブログ見ていませんでしたが、『ヘラティ文様』特集充実ですね。個人的にもヘラティ大好きですし、かつてのホラサーンの州都ヘラートに憧れます。やはりサロールハニあたりがしっくりきます。
馬の鞍座布団いい感じですね。
そういえば神戸ですごく古いシルクのフェラハン?の絨緞見た事を思い出しました。
紹介されていた、JACOBSEN著の『ORIENTAL RUGS』最初に入手した思いで深い洋書です。
  • tribesakaki
  • 2016.05.19 Thursday 17:56
ご無沙汰しておりますが、お元気そうで何よりです。
ずいぶん前からブログのテーマで文様を考えたいと言っておきながら、ようやく〜という感じです。まだ足を踏み入れたばかりですが、宮廷絨毯ー村の絨毯ー部族絨毯の三者の関係性に注目すると、意外に面白いものが見えてきそうな予感がしています。
JACOBSENの本は古いし、トライバル系の情報が少ないので埃をかぶっていましたが、ついに役に立ちました〜!
また今後とも色々教えてくださいね。
  • ぷぎー
  • 2016.05.19 Thursday 18:48
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