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2016.07.19 Tuesday

「おっかけ」の日々、そしてデジタルデトックス

 

九州から東海までは梅雨明けしたようですが、関東はまだ。

もうすっかり隠居ばあさんの生活になじみ、ぐんぐん成長する稲を見ながら散歩をするのが日課ですが、

たまに東京に出て「おっかけ」みたいなことをやってます。

 

「おっかけ」の対象は絵画だったりアーティストだったり。

 

一番手に挙げられるのは松本竣介かな、やっぱり。

東京藝大美術館で開かれた「いま、被災地から」で「画家の像」(1941)が展示されているのを知ったのが展覧会の最終日前日。

6月26日の最終日に駆け込んで、戦争前夜に描かれた代表作の一枚を観ることができました。

 

IMG_3308.jpg

 

 

画面を覆う不安と焦燥のなかで、家族を守ろうとするかのように立つ自画像。

みていて胸がいっぱいになりました。

 

* * *

 

IMG_3288.JPG

 

次の「おっかけ」は、今年の木村伊兵衛賞受賞の写真家・新井卓さん。

4月の終わりに新宿コニカミノルタプラザで彼の写真を見たのがきっかけ。

 

「ダゲレオタイプ」という銀盤に像を結ばせる最初期の写真技術を使い、

「核」をテーマに写真を撮りつづけている。

第五福竜丸、ヒロシマ、ナガサキ、そして福島。

ところが彼の写真は、いわゆるジャーナリスティックだったり政治的だったり、といった枠をほとんど感じさせず、

どう言ったらいいのか、「実存の重み」また逆に「実存の軽み」を突きつけてくるような印象を受けた。

こんな写真ははじめてだ。

 

銀盤写真って、サイズが小さいうえに照明光を反射してものすごく見辛い。

どうかすると鏡のように自分の顔が写ったりしてギョッとする。

それでも金属独特の質感は、印画紙に現像された写真とは全然違って、

はらわたにズコンとめり込んでくるような存在感がある。

 

展覧会に行って自分が「いいなあ」と思う感覚というのは、

作品に「共感」し「いい作品だなあ」と気持ちを噛みしめることがほとんどだけれど、

新井さんの写真は「圧倒される」感じ。

欧米人がよく絨毯に対し"appreciate"(良さを味わう)という言葉を使うけれど、

新井さんの写真には、"overwhelmed"という言葉の方がふさわしい。

 

IMG_3307.JPG

 

「モニュメント」という写真集も良くできていて、これはこれで非常に価値のあるものだと思う。

ただ、ダゲレオタイプの実物の質感と紙に印刷されたものでは大きな違いがある。

ご本人もそれは承知で、写真集はむしろ別の媒体として自分の作品を広める契機にしたい、と考えておられるようだった。

 

印画紙は同じ写真が何枚もできるが、ダゲレオタイプは複製不可能。

なので、新井さんの展覧会というのはかなり限定されたものになるけれど、

なんといま、川崎市民ミュージアムで新井さんの写真が展示されています。

7月24日(日)までなので、興味がある方はぜひどうぞ!

 

* * *

 

三つ目は「間接的なおっかけ」。

きのう7月18日、東京国立近代美術館で奈良美智(よしとも)さんの講演会があった。

 

私は別に奈良さんのファンではないが、武蔵美時代に麻生三郎さんが彼の恩師であったこと、

「(麻生)先生にお願いして松本竣介や靉光など、すでに他界した仲間たちの人となりを語ってもらう時、

僕は子犬のような眼をして真剣に先生の話を聞いていた」と聞き、

また、奈良さんがけっこう硬派であることは以前からうすうす感じていた。

 

ついでに「見る目のなさ」をさらすようだが、私は正直、彼の作品のどこがいいのかわからなかった。

村上隆よりは好きかな〜、レベルだ。

本人の話を聞けば、彼の作品にも少しは近づけるかもしれない。

 

さて当日は14時からの講演会の整理券を130名限定で10時から配布する。

やっぱ世界的に有名だし、オシャレ系の女性たちにも人気なようだから、朝早くから並ばないとムリっぽい。

前日はあまり体の調子が良くなかったので、

もういいや〜、吉増剛造展も会期あと少しだし、展示だけ見りゃいいか〜、と講演会は諦めて10時直前に着いた。

 

そしたらなんと、「講演会整理券の列はこちらです〜」と係員が呼びかけている。

ウホッ! もしかしてまだ大丈夫?

と「諦め」をさっさと投げ捨てて長蛇の列の最後尾に並んだ。

 

案の定オシャレな女性や美大生っぽいアート系男女などが中心で、

このなかで家計を浮かすために「1000円カット」に甘んじているのは私くらいのもんだろう! とヘンな確信を持った。

 

でも先頭が見えへんがな!

この長〜い列に並んでて、本当に整理券がもらえるのか?

でもそれなら係員が「定員オーバーですので並んでもムリです!手」とか言ってくれるよね?

 

‥‥そんなことを思っているうちに開館になり、列が動きはじめた。

係員の表情がやや不安気味になり焦りの色を露わにするころ、整理券配布カウンターが目の前に来た。

ヤッター! 117番、滑り込みセーフ!

 

IMG_3309.JPG

 

でも2時までに4時間もあるわ、ということで神保町まで歩いて映画を観て帰ってきた。

ああ、なんたる効率の良さ〜♪

 

IMG_3297.JPG

 

13時半から整理券番号順に講演会会場へ。

なかに入ると、そこは皆さんわきまえていてスマホで写真などを撮る人はいない。

 

いよいよ奈良さんが登場して映像を見せながら話をしてくれた。

彼は1959年青森県弘前生まれ。わずかに弘前弁を残した訥々とした語り口。

 

内容は主に若い世代に向けての話だったように思う。

自分の作品はよく「かわいい」とか言われるんだけど、ちょっと違うと思っていること。

自分が描く「子どもの絵」に触発されて、似たような絵を描く人が増えているけれども

自分から見れば「なんだか浅いなあ」と思えること。

(誤解のないように。奈良さんは全然偉ぶったところがなく、むしろシャイな印象を受けた)

 

彼が小学校の5年くらいまでは、昔ながらの農村風景や日常生活が残っていた。

除雪車が無かった時代の「雪切り」、同級生と遊ぶ時も赤ちゃんをおんぶしていた子がたくさんいたこと、

米を入れる俵も自家製だったこと、農村の労働力として馬が身近にあったことなど。

祖父が樺太で暮らしていたし、ソ連抑留者の話も聞いた。北海道にもよく行った。

「自分の原風景としてこういうものがあるわけだから、今の若い人とは違うよね」

 

高校二年のとき「ねぷた」の大きな絵を描いて「奈良は絵が上手い」と評判になったことがきっかけで

美大に進学したけれど、入学したら自分より上手いやつはいっぱいいた。

適当に大学生活を送っていたが、仕送りをヨーロッパ旅行で使い込んでしまい、

それが親にバレないように、公立の美大に入り直して、そこからは仕送りなしでやっていくことにし、

(美大系)予備校のバイトをしたら、教えた生徒がどんどん合格してバイト代が上がった。

なによりも高校生が「先生」と呼んで慕ってくれたことがきっかけで

「だったら僕もきちんと絵をやんなきゃいけないな」と努力するようになった。

学生仲間と一枚の絵をめぐって夜中まで論じたり、絵に対して真剣に向き合うようになっていった。

 

「いろいろな偶然がきっかけで運命がひらけ、今の自分があるのかなあ」

 

質疑応答も面白かった。

 

印象深かったのは「絵を描くときはどこから描きはじめますか?」という質問に「そのときによって違います」。

会場が騒然とする。

下絵とか、全然描かないらしい。

 

「事前に計画をしっかり練ってする旅行もあるけど、

僕は地図なしに旅行してみる、移動しはじめて、そのなかから方向性を見つけていく」

 

彼のアトリエの棚の写真を見せてくれながら「これがある作品の元になったもの」。

‥‥日系人捕虜の写真集、好きなレコード、こけしやオモチャ等々、

はっきり言って出来上がった作品とそれらを結びつけるのは難しい。

でも奈良さんの内面からみれば、それらがいろいろな形で影響をあたえあいながら作品へ込められているのだ。

 

一枚の作品ができあがるまでに、上からどんどん塗っていって最初とはまるで違う絵になる。

たとえば、最初たくさんの円や四角が浮かんだ絵だったのがどんどん塗り替えられていって、

円や四角は消え、「一見シンプルな」女の子の像に収斂されていく過程などがスクリーンに映し出された。

 

ここで「一見シンプルな」と書いたのは、奈良さんの絵の実物を観れば

印刷物で知っていた「ああ、奈良美智の絵ね」という思い込みが吹っ飛ばされるからだ。

私はこの日はじめて彼の「ハームレス・キティ」という作品を観て、

「アニメのイラストみた〜い」「かわいい〜」先入観とは似て非なる、立派な芸術作品だと思った。

 

「どうすれば絵が上手くなれますか?」という質問には

「そう思う時点で止めといたほうが楽かもしれないよ」と一瞬ギョッとする答えもあった。

 

「自分が高校生のときに描いたねぷたの絵が上手かった、みたいな話をしたよね。

でも、今の自分がその絵をみれば、確かに上手いね、でもただそれだけだよね、って思うはず。

そのあと俺はいろいろ努力したんだよ。そのなかでいろんなことを学び、つかんだ。

絵が上手いかどうか、っていうことよりも、そこで自分が得たもののほうが、表現にとってははるかに大事だと思う」

 

「自分が見てきたもの、経験してきたもの、努力したもの、それらすべてが作品のなかに込められている。

パッと見て似たように見えても全然違うのは、不思議とそれらが作品に出てくるから。

なぜだがわからないんだけど、作品にはぜんぶ出てくるんだよね」

 

これは奈良さんが語られた内容のごく一部です。

内容がご本人の意図を外れて私が誤解していたら申し訳ないのですが、

とにかく奈良さんの話はとても魅力的なものでした。

 

そういうわけで、奈良さんの作品を見る目が少し変わってきたように思います。

 

帰宅してポストカードセットを眺めていて気づいたこと。

奈良さんは、もちろん麻生三郎や松本竣介などの作品から大きなものを受け取っていると思うけど、

フィリップ・ガストンの影響もかなり受けているんじゃないかって。

 

IMG_3311.JPG

 

ガストンは1913年カナダ生まれ。KKKやユダヤ人大量虐殺をテーマにした。

彼もまた私にとっては謎の画家。

初期のいわゆる「上手い」絵から転じて、深刻なテーマをマンガのように描き始める。

上の絵などは、画家本人が「断罪されるべき対象である」KKKのコートをまとい自画像を描いている。

 

IMG_3310.JPG

 

ガストンといえば、横から見た特徴的な目と膨れた頬。

右は奈良さんの作品「ガストン・ガール」。

 

 

上の女の子の作品はいかにもガストンだけれども、この犬の題名も「ガストン・ガール」。

ううむ、意図が測りかねる〜。

 

アートの森は奥深く、謎に満ちている。

 

* * *

 

さて、実はここからが言いたかったことなのですが、

しばらくの間ネットと距離を取ろうと思っています。

 

暇があるとスマホをのぞいていますが、目にもよくないし、

ここらでちょっとデジタルデトックスしたほうがいいと思うようになりました。

 

ですのでブログはあまり更新できなくなると思います。

たまに気が向けば書くかもしれません。

 

それではみなさん、体調に気をつけてお過ごしくださいね。Docomo123

 

 

 

 

 

コメント
管理者の承認待ちコメントです。
  • -
  • 2016.07.20 Wednesday 02:46
ある方から暖かいコメントをいただいて、記載のメールアドレスにお返事を差し上げたのですが、なぜだかメールが戻ってきてしまいました。よろしければ以下のアドレスまでご連絡いただけるとありがたいです。どうぞよろしくお願いします。
tian2jing3@yahoo.co.jp
  • ぷぎー
  • 2016.07.20 Wednesday 09:58
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