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2017.01.31 Tuesday

茶色の経糸1 羊毛&ヤギ毛

 

今回の丸山コレクションでは、ヤギ毛もしくは茶色の羊毛の経糸を使ったピースが目につきました。

そこで自分が持っている茶色の経糸の絨毯をあらためてチェック。

 

* * *

 

現在織られている絨毯のほとんどは、白い経糸が使われています。

 

デパートなどで売られている都市工房製作の絨毯は、経糸も緯糸もコットンを使ったものが主流のようです。

コットンの方がたわみが少なく織りやすいし、実用品として考えると耐久性にもすぐれています。

一方でイラン産のギャッベの経糸は、いまなお生成りのウールがほとんど。

また、シルクのペルシャ絨毯なら、経糸の材質もたいていはシルク。

いずれにしても、茶色の経糸は、新しい絨毯にはまず見られません。

 

うちのリビングのイージーチェアの下に敷いてあるのは

イラン北部に住むトルクメンの今出来の絨毯。

 

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文様はケプセギュルなので、トルクメンの中でもヨムートのものだと思われます。

 

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経糸は変哲もないマシンスパン(機械撚り)。

材質はウールのようですが、不自然な艶があって化繊との混紡かもしれません。

 

* * *

 

しかし古いヨムートのパイル織には、経糸に茶色の羊毛が使われることが多いようです。

茶色の羊の原毛そのままの色。

 

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この4枚はトルクメンのヨムートのもの。

 

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写真がうまく色を拾っていないけれど、チョコレート色。

テント内に吊るして使うチュバルの表。推定19世紀末。

 

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端の処理として内側に縫いこんであるので見えにくいけれど、経糸は茶色の羊毛。

 

IMG_0020.JPG

 

これもおそらく19世紀末くらいのチュバルの表。

下側の無地の部分をエレムと呼びますが、アブラッシュが出ていてこっくりしたブラウン。

 

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薄茶色の経糸で、上のチュバルよりもポワポワした柔らかな羊毛。

 

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こちらは少し時代を下ったものですが、絨毯の用途はよくわかりません。

セルベッジ(耳)やモチーフが可愛くて、優しい茶色が気に入っています。

欧米市場ではほとんど見かけない珍しいタイプのヨムート。

 

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この経糸もポワポワした薄茶色の羊毛。

 

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4枚並べた一番下のトルバ表皮だけは、白い羊毛を使っています。

これはパイル織りでなく、ソマック織りです(平織を織りながら斜めに糸を入れていく、刺繍のように見える技法)。

 

* * *

 

茶色の経糸といっても、羊毛だけではなく、ヤギ毛を使ったものもあります。

 

たとえばトルクメン絨毯にカテゴライズされるベシール絨毯は、経糸にヤギ毛を使うことが多いのです。

 

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上の4点に比べるとずいぶん大きいチュバルの表皮。

東南アジアからウズベキスタンに伝播したイカット文様の影響を受けた意匠と言われています。

 

ベシール絨毯はアフガニスタン北部からウズベキスタンにかけてのアムダリア川流域で織られていました。

トルクメンのエルサリ支族、ウズベク族、近隣に定住する村人など、いくつもの製作グループがあったようです。

これはたぶんエルサリのものでしょう。

 

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この経糸がヤギ毛。

羊毛に比べると固くまっすぐなので、糸を撚るのに苦労するはずです。

それでも水を弾き、虫に食われず、糸の強度が強いため、特定のグループの絨毯に使われました。

 

大型の古いベシール絨毯を個室に敷いていますが、

アンティークなのにヤギの経糸のせいか頑丈で、ガンガン掃除機をかけても大丈夫。

 

* * *

 

このほか、カシュガイ族の絨毯の経糸に、茶色の羊毛が使われたものがあります。

 

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リビングの壁に飾っている小型の絨毯。

やはり19世紀末ぐらいのものだと思われます。

 

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茶色の経糸といっても、アイボリーの糸と撚り合せて双糸にしたもの。

 

「カシュガイは経糸に生成りを好み、ルリ族やハムセ連合は茶色い経糸が多い」

という説を聞いたことがありますが、

この絨毯はまちがいなくカシュガイのもので、茶色の経糸が使われています。

 

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こちらも典型的なカシュガイの文様ですが、経糸は茶色を含めいろいろな糸が使われています。

 

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やはり茶色とアイボリーの双糸や、、、

 

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いろんなバリエーション。

 

* * *

 

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以前にもご紹介したけれど、わたしの「トライバルラグの原点」ともいえるピースがこれ。

部族絨毯に魅せられはじめたころに手に入れた、バルーチの袋の表皮。

このピースを見ていると、なんだかホッとするのです。

 

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経糸に茶色の羊毛やヤギ毛など、さまざまなものが使われていて、

それが美しい調和をつくりだしていると感じたんですね。

 

天然染料は色あせても、なお美しい。

大好きな、大好きな、ピースです。

 

コメント
いつもながらの美しい写真と丁寧なぷぎーさんの紹介文で綴られたこのブログを印刷し教材として携え、本日「たばこと塩の博物館」で開催されている「(丸山コレクション)西アジア遊牧民の染織…塩袋と旅するじゅうたん」に行ってきました。今日は雲一つない晴天で、博物館の近くを歩いていると東京スカイツリーが大きく見えました。ご紹介いただいたように、ガラスケース内に展示されている作品が少なく、すばらしい作品の数々を本当にまじかに相対することができ、染料やそれぞれの材質の質感、織りのディテールまで手に取るように知ることができました。それにしても丸山繁氏のコレクションは質量ともにすばらしく、氏の作品に対する愛情・情熱が見事に伝わってきます。まさに待ちに待った展覧会でした。入場料がたったの300円、小生は高齢者になるのでその半額で入場することができました。カタログも前回のものも入手できるよう販売していましたが、それぞれ丁寧な解説が加えられており、早速2冊を購入しました。気分的に大変満足しましたが、博物館の外に出るとスカイツリーが再び目に入り、帰りに初めて立ち寄ることにしました。地上450mの見晴らしはすばらしかったです。いい1日を過ごしました。
  • Whyte Laydie
  • 2017.02.02 Thursday 22:44
さっそく「たばこと塩の博物館」に出向かれたとのこと、さすがの行動力に敬服いたします。
スカイツリーからの眺めはいかがでしたか?
曳舟近くの向島百花園も風情がありますので、またこちら方面に出向かれた際にはお勧めします。永井荷風も愛したところで、いわゆる庭園ではなく江戸時代の庶民の美学を感じる場所です。園内の大銀杏は見応えあり、今では貴重な山野草もたくさんあり、私はそこで宮沢賢治の作品にあるオキナグサを初めて見て感動しました。

展覧会では丸山繁氏の講演も拝聴いたしましたが、氏の西アジアの遊牧民とその染織りへの深い愛情と熱い思いを感じました。過酷な気候風土の土地に何度も通い、見ず知らずの異国の人びとと交渉され、数々の困難を乗り越えられながら、思いが通じた経験は本当に得がたいものだったと思います。私のような「ネットでポチ」には決して到達することのできない、高い境地だと心から尊敬いたします。
2008年の展覧会を見逃してしまいましたが、図録の素晴らしい塩袋などを見ると、是非とも観るべきだったと後悔しています。
  • ぷぎー
  • 2017.02.03 Friday 06:53
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