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2017.11.10 Friday

ギャラリートーク2回目 2017.10.14

 

ギャラリートーク2回目の記事です。

 

1回目のトークに来てくださったのは主婦の方が中心で、

絨毯好きの知人があたたかく見守ってくれていたので、比較的落ち着いて話をすることができました。

 

でも2回目はいかにも絨毯に詳しそうな男性(面識がない方)が3人ほど、

「ヤバ! いいかげんなこと喋ったら『嘘つけ!』って怒られるかも‥‥」と怖気づき、

人数も最初15人くらいではじまって、やがて20人くらいに‥‥アセアセ

 

おまけに、絨毯展には絶対来ないと思っていた下の息子が彼女を連れて参加! 

トークの日は知らせていなかったのにナゼ?! と思いきや、

いつのまにかブログを見つけて読んでいたらしい。

「かあちゃんのブログ笑える〜! 『テヘ』とか書いてあるし」ゆう★

 

そんなこんなで、わずかなコトで動揺する私の「アワアワ」が炸裂! マジで

話している途中も「アレ? 次ナニ話すんだっけ?」とフリーズ。

でも話しているうちに、みなさん好意を持ってくださっているのがわかってきて

なんとかトークを無事終えることができました。

 

参加してくださったみなさま、ありがとうございました。ハート

 

* * *

 

さて、内容です。(今回も一部加筆してあります)

 

<なぜ古い絨毯が好きになったのか?>

 

この会場に展示してあるのは、19世紀末に織られたと推定されるものが大半を占めています。

 

絨毯との最初の関わりは、新しく織られたギャッベだったわけですが、

やがて、織られて数十年経ったオールド絨毯の魅力に惹かれてゆき、

さらにはそれでも物足りなくなり、100年を超えるアンティーク絨毯を追い求めるようになりました。

 

なぜ古い絨毯に魅力を感じるかというと、

まずウールという素材が、使うにつれて表面の毛羽が取れ、ツヤが出てくる点があります。

シルクの絨毯は最初からツヤがありますが、ウールの絨毯は時間をかけてツヤが出てくるんですね。

 

そしてだんだん化学染料と天然染料の違いがわかってくるようになりました。

天然染料の場合は、時間とともに色がより一層美しくなるんです。

 

なぜ「草木染め」と言わずに「天然染料」と言うかというと、

植物由来以外にも「コチニール」などの「昆虫染料」も含まれるからです。

 

日本の草木染めは、わりと穏やかな色が多いようですが、

中東地域の天然染料は、わりと濃い色が好まれます。

それが時間とともに余分な染料が落ちるとともに、

「色褪せる」というよりは「熟成する」といった方がいい変化を見せます。

 

また、ちょっと表現しにくいんですが、「古いものが時間とともに身に纏う雰囲気」というものがあります。

たとえば数年前に実家に帰ったとき、母が私のお雛様を飾ってくれていたんですが、

「あれっ? 昔はこんなに良いお雛様だとは思わなかったんだけど、

なんだかいい感じになってる」と思ったことがありました。

お雛様が50数年という歳月のなかで「何か」を身に纏ったのかもしれません。

 

<古いものならなんでも良いわけじゃない>

 

では、古い絨毯ならなんでも良いかというと、そんなことはないんです。

 

一般論としてアンティーク絨毯は、糸の質や染料、文様の力強さなどが優れていると言われます。

でも昔だって、質の良くないウールもあったでしょうし、

織りの技術がイマイチだったり、バランスの悪い意匠の絨毯もたくさんあったと思います。

 

ただ、そういう絨毯はたとえば「敷物」としての「使用価値」がなくなると、

自然と廃棄されていったんではないでしょうか?

絨毯は役目を果たして、その一生を終えていったんだと思います。

 

一方、かなり痛んでしまったけれど、なお見事な手仕事である、捨てるに忍びない、

と思われたものは、フラグメントとしてでも生き残っていきます。

そうやって淘汰されて残っているアンティークは、

残るべくして残ったという部分があると思うのです。

 

* * *

 

<嫁入り道具としての染織に優れたものが多い>

 

[  その1 名古屋の嫁入りとトルコの村に残る風習  ]

 

遊牧民の染織をこうして集めてきて感じるのは、特に「袋物」ですが、

「嫁入り道具としての染織に優れたものが多い」ということです。

 

一頭の羊でも部位によってウールの質が違いますし、

春に刈る毛と秋に刈る毛では、春の毛の方が質が良い。

娘が生まれたその日から、その家では嫁入り道具に使うための「とびきりのウール」を貯めていきます。

原毛から糸にする作業も、念入りに梳き、丁寧に紡ぎます。

染色も、手間と時間をかけて選りすぐりの美しい色に染め上げます。

織りの作業も花嫁と母親の腕の見せどころ。

 

嫁入り道具としての染織は、一世一代の大仕事なのです。

 

ちょっと話が外れますが、「名古屋の嫁入り」ってご存知でしょう。

今はライフスタイルが変わってきているので昔ほどではないかもしれませんが、

名古屋は嫁入り道具や結婚式など、とても豪華だと言われていますよね。

 

結婚が決まると、豪華なブライダル家具一式を買うわけですが、

それを新居に運ぶ前に、まず花嫁さんの実家に運び、近所の人たちにお披露目会をするようなんですね。

家具を運ぶトラックも、紅白の幕をかけて、家具が見えるように一部ガラス張りになっているものもあるとか。

そうやって「うちはこんなに立派な嫁入り道具を揃えたぞ!」というメンツを競う場でもある。

 

一方、これと似たような風習がトルコの村にもあるんです。

 

P1013380.jpg

”NOMADS IN ANATOLIA” より

 

結婚式の前にお嫁入り道具一式を揃えた花嫁さん宅では、近所の人を招いて「お披露目式」があります。

 

P1013379.jpg

 

 

衣類や寝具など、ありとあらゆるものを公の目に晒して、

「うちはこんなに立派な嫁入り道具を揃えました!」とデモンストレーションするわけです。

 

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この村では、定住して大きな絨毯を織ることはなくなっても、

遊牧生活の象徴的な「アラ・チュバル(色糸でグループの文様を織り込んだ収納袋)」だけは織るようです。

花嫁が織ったチュバルをラクダに括りつけて、結婚式のパレードがはじまります。

 

いまや純粋な意味で遊牧生活を営む遊牧民はほぼいなくなってしまいましたが、一部の風習はこうして残っています。

ただこの写真も1970年代のものなので、いまも風習が同じように続いているかどうかはわかりません。

 

 

[  その2 堅牢な実用品&部族のアイデンティの象徴    ]

 

日本の私たちは、必要な家財道具がなければ気軽に店で買うことができます。

しかし昔の遊牧民はそんなことはできませんでした。

 

結婚して独立した家庭を営む際、嫁入り道具として持ってきたものが家財道具のほぼ全てであり、

それを何十年もずっと使うわけです。

袋物にせよ、敷物にせよ、長い間の使用に耐えうる堅牢性が求められます。

 

IMG_3428.jpg

 

「敷物」としての絨毯も大事ですが、遊牧民にとって「袋物」というのは非常に大切な存在なんですね。

 

一番左の「ヘイべ」はわりと小型で、男性がバザールなどに行くとき、肩にかけて使ったようです。

それ以外にもロバや馬の背にかけて使う「鞍掛袋」、

宿営地の移動の際には、ラクダの両脇に吊るす「マフラッシュ」や「チュワル」などがあります。

 

バザールに行けば、他のトライバルグループや定住する村人との接触があります。

宿営地の移動の際も、やはり一定の緊張関係を持った「他者」との遭遇があります。

そのときに、袋の文様などから「バルーチ族だ」とか「カシュガイ族だ」といったことがわかります。

 

色鮮やかで堂々とした袋や、ラクダの荷物を包むように掛けられた絨毯・キリムが

かれらのアイデンティティーや部族の誇りとなるわけです。

 

嫁入り道具として織られた絨毯や袋物は、社会的に非常に重要な意味を持つんですね。

 

IMG_3436.jpg

 

(つづく)

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