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2017.11.18 Saturday

ギャラリートーク2回目 続編

 

ギャラリートーク2回目のつづきです。

 

<遊牧民絨毯の意匠について>

 

本来、遊牧民の絨毯は工房の絨毯のような「下絵」を使いません。

女性は幼いときから教わった、比較的簡単なモチーフをそらで覚えています。

部族に伝わる伝統的な様式に沿うかたちで、

モチーフを自分なりに組み合わせながら絨毯を織るのです。

 

IMG_0683.jpg

 

右側の絨毯を、仮にカシュガイ族の「絨毯1」と呼びます。

「七面鳥」のように見える赤いモチーフは、カシュガイ族の伝統的な文様です。

「スカラベ」だと考える人、「カニ」「カメ」という人、文様に関してはいろんな説があり、

個人的には勉強不足で、自信を持っていうところまで至っていません。

 

ボーダーの文様は、カシュガイ族だけでなく、ルリ族やハムセ連合の絨毯にも見られますし、

フィールド内のモチーフである星や花、鳥や動物は、南ペルシア一帯の遊牧民によって広く使われています。

 

IMG_0676.jpg

 

この絨毯のポイントとして、染めが美しいこと、配色が上手なことが挙げられます。

 

その上で、そらで記憶しているモチーフを組み合わせて夢のある全体像をつくり上げていると思います。

 

ここで強調したいのは、おそらくこの絨毯は「下絵」なしで織られたのだろうということです。

(「ワギレ」と呼ばれる「織り見本」は使ったかもしれませんが)

 

都市工房の絨毯では、専門のデザイナーが考案した「下絵」を方眼紙にトレースし、

織り子はその方眼紙を見ながら織り進めていきます。

その際大切なのは、方眼紙通りに、歪みなく織っていくことであって、

どうすれば全体の構図がよくなるだろうかといった、「手織り作業」以外のことは考えません。

 

一方で「下絵」を使わない遊牧民の絨毯は、全体図を意識しながら織らなければ良い絨毯は織れないのです。

頭のなかに「下絵」というか「イメージ図」のようなものはあるでしょう。

けれども方眼紙を使わずに、イメージ通りの絨毯を織るということがどれほど難しいものか、想像してみましょう。

 

上の写真を見てください。

大きなモチーフ、小さなモチーフ、直線、曲線(のように見える線)、色の取り合わせ、、、

どれとどれを組み合わせていけば、綺麗に見えるか、楽しい絨毯になるか、

織っている女性がどれだけ苦心して、想像力を働かせながら作業を進めたかーー

 

わたしたちもそんなことを考えながら絨毯を眺めると、もっと楽しめるかもしれません。

 

IMG_0657.jpg

 

こちらもカシュガイ族の絨毯で、仮に「絨毯2」と呼びます。

これが「下絵なし」で織られたと考えると、これはもう、特別な絨毯です。

 

「絨毯1」は綺麗ですが、「鑑賞」するつもりでじっくりと眺めていると、やや単調な印象も受けます。

たとえば左上の4分の1をじっと見ていると、菱形モチーフが多用されていて「工夫するのに疲れちゃったかな?」という感じ。

 

それに比べて「絨毯2」のモチーフの多様さや組み合わせ、配色を見ていると、

最初から最後まで心地よいリズム感が継続し、優しさと楽しさが感じられます。

 

P5116875.JPG

 

「絨毯1」もまずまずの絨毯ですが、比べてみると「絨毯2」がどれだけ素晴らしいかがわかります。

 

P5116878.JPG

 

ボーダーもご覧ください。

どこを見ても細やかな工夫がなされ、織り手の想いが込められているように感じます。

「方眼紙」なしにこれほどの絨毯を織った女性は、どんな人だったんでしょうか。きらきら

 

P5116871.JPG

 

「華やかな絨毯」「綺麗な絨毯」、、、いろいろな絨毯がありますね。

遊牧民の絨毯なら、「楽しい絨毯」「力強さを感じる絨毯」などと形容できるものもありますが、

「気品が感じられる絨毯」というのは、めったにありません。

この絨毯には、気品があります。

 

IMG_3440.jpg

 

さて、こちらは「ハムセ連合」と呼ばれる部族連合の絨毯です。

仮に「絨毯3」と呼びます。

 

「絨毯1、2」がおそらく「下絵」を使わなかったのに対して、

この絨毯は「下絵」に近いものか、もしくは「織り見本」を使って織られたのではないかと思います。

というのは、この「ボテ文様」はかなり複雑で、「そらで覚える」レベルではないからです。

 

1回目のギャラリートークでは、この絨毯に関して

織っているうちにタテ糸が足りなくなったことに気づき、一番上の5列目のボテを小さくせざるを得ず、

「4.5ボテ絨毯」になっているという話をしました。

 

なので仮に「下絵」が使われたとしても、

工房のような正確な「下絵」ではなく「デザイン画」のようなものか、

「見本の絨毯」を見ながら織ったものか、という可能性が高いのではないでしょうか。

 

私が手に持っているのは、19世紀にケルマンで織られたショールのフラグメントです。

 

インドのカシミール地方で織られていたカシミールショールが19世紀にヨーロッパで大流行し、

イランのケルマンでもカシミールショールのコピー品が織られるようになりました。

 

もとはショールのモチーフであったボテ文様が、やがて絨毯にも使われるようになり、

下のようなケルマン絨毯が織られます。

 

P1013382.jpg

 

"CARPET MAGIC" by Jon Thompson より ケルマン絨毯 推定1900年頃

 

このようなケルマン絨毯の意匠がやがて遊牧民にも伝わり、それを真似た絨毯が織られるようになりました。

 

P1013385.jpg

 

"FLOWERS OF THE DESERT" by Jhon J. Collins, Jr より

ハムセ連合 推定1900年頃

 

P1013384.jpg

 

同上 ハムセ連合 推定1880年頃

 

上のケルマン絨毯とハムセ連合の絨毯2枚とを比べると、まずボーダーが違いますが、

ボテ文様自体も、写実的なものからやや抽象化されたものへと変化していますね。

 

そして今回の展示会の「絨毯3」はさらに抽象化され、モダンといってもいいボテに変化しています。

 

このように遊牧民の絨毯でも、部族に長年伝わってきた固有の文様もあれば、

当時の流行に影響を受けて生まれたデザインもあるんですね。

 

* * *

 

 

‥‥とまあ、2回目のギャラリートークはこんな感じでした。

 

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